Last joker brand new world 中編

side F ページ30

あの日、ここから逃げ出した

木の陰になっていて、はっきりとはわからないが・・



あの日使ったエレベータの入り口まで、気配を殺して近づく




SPのような男たちは、正面玄関のほうを凝視しており、この隠し扉に気づくものはいない
もしかしたら、幹部の一部しか、この事実を知らないのではないか


指先で、軽くドアを押すと、少し開いた隙間


やはり、な



するりと体を入れて、一瞬でその中へと忍び込む





「はぁ、やっぱりか・・」



エレベータに対峙するも、その扉は開く気配はない
エレベータのパネルにもボタンはなく、あくまであの部屋からここへと降りるための一方通行か




『北山、やっぱりここからは入れない。Cパターンで進む』


『おう、了解』




インカムに小さく呟くと、そう合図が帰ってきた




エレベータの隣の扉をゆっくりと開ける

地下室のような薄暗い部屋




周りを見渡して、少しずつ歩みを進めた






もし、今日２つの組織が一同に揃うなら・・当然警備も、幹部たちの意識も、そちらに向く

その隙に屋敷に忍び込んで・・データをまるごと掻っ攫う



この間には、成し遂げられなかった作戦も、
２度目ならば屋敷の図面も、少しは把握できている

またとないチャンスだった




地下倉庫の中を抜けると、細くドアから明かりが漏れている

ゆっくりとドアの隙間を除くと、細い廊下につながっていた




慎重に、あたりを窺う




人気がまるでない






・・おかしいな



違和感を感じて、目を凝らすも、誰もおらず、声も聞こえない







いくら、組織同士の会合と言っても、これだけの組織の警備が、手薄すぎないか

俺達のように、この隙に、と考える輩がいても不思議はない

あのトップたちは、間違いなく切れ者だろう

そんなことを考えて、少しはこういった裏口に警備の手を回してもいいだろうに・・なぜ、




『藤ヶ谷！』




そう思ったときに、インカムから北山の声がした




『ここ、すでに何かが起きてる！』


「え、どういうことだ！？」


『SPたちが、大勢やられてる！もうすでにっ・・』


北山の切羽詰まった声に、耳を凝らすと、次の瞬間、遠くのほうで銃声のようなものが聞こえた


SPがやられてる？


すでに侵入者か？


会合はどうなった？！





「おいっ！北山！一度合流しよう！！」



このままじゃ、危険だ

そう思った瞬間、だった

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