Last joker brand new world 中編

side Ki ページ28

『絶対、無理はしないで！いい！！わかった？！』


まだ少しだけ、愛おしい人のぬくもりを残したままの体
だけど気持ちは、久々の戦場へと向けて高揚していく

耳元につないだインカムから、いつも冷静なはずなのに、珍しく横尾さんの甲高い声が響く



「わかってるよ、渉。北山のことは、」



『違うの！！太輔のことも！お前らいっつも暴走するんだから！！』





既視感のある会話に苦笑しながら、藤ヶ谷の愛車に跨る

エンジンをふかして、すでにうなりをあげそうなほど高ぶっているそのバイクは、俺達の長年の仲間でもある




「よし。じゃ、通信切り替えっから。横尾さん、またあとで、連絡する！」




そう言って、インカムを藤ヶ谷と俺の分だけの回線へと切り替えた

プツリと切れた電子音とともに、息を一つはいた



「よし・・・行くか」



藤ヶ谷が、きゅっとグローブをはめながら、その長い脚でバイクを跨ぐ

ふと、交わる視線

大丈夫、いつもどおりにやればいい

いつだって、そうしてきたじゃないか




「おう」




昨晩の、藤ヶ谷の熱い瞳を思い出して、少しだけ心臓が苦しくなる

大丈夫・・もう何があっても、後悔だけはしたくない




「行くぞ、」





黒い魔物が、大きく唸りを上げて、走り出した

side Ki→←side Ki

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す