Last joker brand new world 中編

side Ki ページ11

藤ヶ谷の目が悲しげに揺れた


「っ・・・」

「北山が・・」



藤ヶ谷は今にも泣きだしそうに表情をゆがめ、そういうと、黙り込んでしまった

その傷ついたような表情をさせているのは、きっと俺のせいだ

いたたまれなくて、その大きな背中に、自分からしがみついて、ぎゅっと抱きしめた



「言えよ・・」

「っ・・」




俺がそういうと、藤ヶ谷が俺を見上げてくる


「お願いだから・・っ、藤ヶ谷の思ってる事・・ちゃんと言えよっ・・」


「っ・・」


藤ヶ谷の背中に、ぎゅっとしがみつく

ドクドクと、心臓の鼓動が聞こえる
この音は・・いったいどちらのモノなんだろう


藤ヶ谷は、ゆっくりと俺の手に自分のを重ねると、俺のほうに向きなおった




「北山が・・いなくなりそうで、怖いっ・・」


「え・・」


「なんでお前は、いつも・・。お前ばっかり、傷つくなよ・・」





そういうと、藤ヶ谷は、大したことない、先ほど首筋に負った注射器のかすり傷を撫でた





「ふじがや・・」


「ごめん、北山・・」



その、藤ヶ谷を、なんだか守ってやりたい気持ちになって、俺はもう一度ぎゅっと藤ヶ谷を抱きしめた





「心配かけて、ごめんな・・でも、俺は絶対、お前から離れたりしないから」



「っ・・・ほんとに」



「あぁ、約束だ」




俺がそういうと、藤ヶ谷が不安げな瞳を揺らすから、その瞳に吸い込まれるように、自分からそっと唇を重ねた


「今は・・まず、ケガ治せよ・・そしたらいつかさ、」


「っ・・・」


「ちゃんと・・・お前のモノに、してよ」




俺がそういうと、藤ヶ谷はパッと頬を染めた

さっきまで、自分のほうが色気をまき散らして攻めてきたくせに。はっきりと言葉にすると、照れたように視線を外す

ふと、あぁやっぱコイツは年下なんだなぁ、ってなんだか胸の奥が少しだけくすぐったい気持ちになる




「北山・・」


「ん？」


「ちょっとだけ、」


「え」




藤ヶ谷はそういうと、はだけたシャツの隙間から、俺の首筋にチュッとキスを落としてきた



「身体が治ったら・・お前の全部を貰う」



そう言って、俺の知ってる、妖艶な瞳を向けてきた




「・・・おぅ」



その瞳に応えるように、くしゃっと藤ヶ谷の、夜の色をした髪を撫でた
結局その日は、藤ヶ谷の足を気遣いつつも、ただ二人で、ベッドの上でキスをしながら過ごした

そんな甘い日は、日本を経ってから、もうしばらくぶりだった気がした

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