Last Joker brand new world 前編

side Ki ページ4

「さて、と」



あのあとソファで二度寝して、昼過ぎに目を覚ました俺に、藤ヶ谷は温かな朝食・・というにはだいぶ遅すぎる食事を用意して待っていてくれた

サンドイッチをコーヒーで流し込みながら、昨日玉から送られてきた封筒の中身を取り出す




「今日は、アジアの各地から、このマーケットに有力な人間がたくさん集まるらしい。見ものだな」


プラスチックのカードをピンと指ではじいて、一枚を藤ヶ谷のほうへ投げた



「あぁ・・闇のブローカーたちの趣向を凝らした、年に一度の競売。宝石や銃はもちろん、中には麻薬や臓器なんていう、エグイもんも出品されるみてぇだな。そして・・そんな闇の市場の実権を握る人物」



藤ヶ谷が、タブレット画面をスクロールして、こちらへ向けた



「J＆Eコーポレーションの代表取締役・・所有する資産は世界の長者番付の中でもトップクラスと聞く。
表向きは、世界規模の大会社のお偉いさんってとこだけど・・裏では結構ヤバい事やってるって話だぜ」


「みたいだな。渉と玉が集めてくれた情報によると、慈善事業なんかにも積極的らしい。そのおかげか、警察もノーマークらしいな」


「そいつらの懐に入って、中から壊滅させることができれば、アジアの闇の市場を手に入れたも同然だ。」


「あぁ・・でも、謎は多い。あれだけ有名でありながら、裏で堂々と闇の事業に手を染めることができるなんて・・」


「だからまず今日は、うまく潜入して、内部情報を集めなきゃいけねーな」



指ではさんだカードをピンっと弾く

玉と宮田の作ってくれた偽造のPASSには、ICチップが埋め込まれていて、「VIP」の文字が並ぶ





「なんだかんだ、こんな離れたとこにいても世話になってら、アイツらに感謝だな」


「そうだね。そのためにも明日の夜に」


「あぁ、収穫をもって帰ってやろうぜ」



残りのコーヒーを飲み干して、俺は立ち上がった



この土地へ来て、明日の山は藤ヶ谷と初めての仕事になりそうだ

俺たちは、何も作もなく手をこまねいていたわけじゃねぇ

ただ…息を潜めていただけ



すっかり、あのときの傷も良くなった



「北山…高ぶってる？」

藤ヶ谷の声に、口角を上げて振り返る


「あぁ、もちろん」



さぁ、新しい世界で…

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