この強がりも全部

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引っ越ししてからこいつが家に来たのは初めてで、俺の部屋のはずなのに 藤ヶ谷の匂いが空間を満たす




「で、こんなところまでついてきて、どうするの」



予想しなかった展開に頭がついていかず 突き放すように言った



「・・おかゆでも作る？」

「は、風邪じゃねーし」




いえるはずない 心配されてうれしいなんて

強がりでも意地っ張りでもこうやって 心を閉ざしていないとそんな浮ついた気持ちがバレてしまいそうで




まぁ座れば？

と促すと、静かに俺の隣に腰を下ろした


「・・・」


「・・・・」



お互い沈黙の中、藤ヶ谷を盗み見ると眉間にしわを寄せて考え中

相変わらず 顔に出やすいところは昔から変わらないな



「悪かったよ、心配かけて」


照れくさいから、ソファに体を預けながら視線だけで向き直る



「別に・・」



「お前が、俺のほう見てるの気づいてたよ。背中すっげー痛かった。でもお前に心配かけたくなくて・・意地はってたかも

気を付けるよ、もう心配かけないからさ」



本当は 倒れそうになった時

藤ヶ谷の背中だったから安心できた

いつだって俺が 全部を任せられるって思えるのはお前だから

だけど そんなこと言えないから





藤ヶ谷が じゃ、俺帰るよ、と言い残して立ち上がろうとする





俺の前からそうやってまた すぐに消えていかないで


とっさに 手首をつかんだ

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