winter color of kiss

side F ページ22

マスクの下ではぁはぁと荒い呼吸を繰り返す北山を見つめながら、俺はどうするべきなのか悩んでしまった


「ガヤーそろそろだってぇ！ミツ起こしてー！」


楽屋の隅の方からにかの声がし、苦しそうな表情で眠る北山を見ていた俺は、一瞬肩がピクッとなった

辛い…んだよな

どうみても、体調が悪そうな北山を起こすのは気が引けたが、きっと本人は無理をしてでも、収録に出るだろうし、体調不良を理由に休むなんてことはしないはずだ

北山の、そういうところは、何よりもわかってるつもりだし…もし俺が同じ立場だったら、きっとそうするはず

メンバーに隠れるようにこんなところで眠っていたのも、アイツらに余計な気を使わせたくないから


そんなところが北山らしい

北山らしいけれど…厄介だ

もっと、頼ればいいのに
何でこいつは、いつも、一人で突っ走って無理をするんだろうか





だから俺が今できる精一杯のことは



「…北山、収録始まるよ、起きて」


なるべく優しく肩を叩いた



「ん…あ…ごめっ、ん…」


けだるそうにぼんやりとした表情でまぶたを開けた北山の顔を見つめる

やっぱり…赤いな


「じゃ、行こっか…」


気付かれたくない北山のために、俺ができる精一杯のことはきっと、
北山なりの不器用な優しさを受け入れること

コイツの体調不良に気づかないふりをしながら、サポートしてやろう

俺は、心の中でそんなことを思いながらスタジオへ向かった

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