winter color of kiss

side Ki ページ17

「あ、おう…どうした？」

『いや…特に何もないんだけど…』

うわっ、俺何やってんだよ！
用事なきゃかけてくるな、みたいな言い方しちゃった


「あ！全然っ！俺も暇なんだけど！！」

『ふふっ…ねぇ、北山は今、家？』

「あ…うん」

『行っても…いい？』

「…」

『だめかな？』


そんなの、決まってる


「いいっ…」

俺がそう言うと、藤ヶ谷は受話器越しに、ありがとうと微笑んだ




＊



「適当に上がって！」

玄関で藤ヶ谷を迎え入れ、焦って撒き散らしたフレグランスミストの香るリビングに、招き入れる
普段、そんなおしゃれな客を招くことのないこの家

「コーヒーくらいしかねーけど」

キッチンで、たまたまもらったドリップ式の、少し洒落たコーヒーを淹れて、テーブルの上に差し出した


「ありがとう」

そう言って微笑んだその顔は、彫刻のようにすっと通った鼻筋と、涼やかな目元
形のいい唇に恵まれいて、その表情に見とれながらもはっとする

この唇がっ…

自分の、ここに触れたと思うと、思わずカサついた唇を舐めた


「ん？」

「いや、なんでもっ…」

「なんか、あれ以来、あんまり北山とゆっくりできなかったから、二人でゆっくりしたいなって」

そういった藤ヶ谷は、やっぱり息を呑むほど整った顔で俺を見つめてきた


「北山、これ…何処か行くの？」

「え、あ、」


画面がついたままだったタブレット

イルミネーションやら温泉の特集ページが組まれたサイトが開きっぱなしだ


「なんか、その…藤ヶ谷、と。デートらしいこと…したくて」

そういうと、藤ヶ谷が、ぷっと吹き出しながらコーヒーをおいた


「北山、かわいいね」

「は？！なんだよっ…」


思わず声を上げると、藤ヶ谷はニヤニヤしながら俺を見つめてくる


「デートなら、もうしてるじゃん」

「え」

「お家デート」


そういって、ソファの上に座った藤ヶ谷は、ポンポンと隣の席を手で叩いた

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