winter color of kiss

寒い夜に、一つだけ ページ1

side Ki




はぁっと吐く息が白いモヤとなって、夜空の冷たい空気の中に吸い込まれては、消えた

こんな都会のネオンの下では、冬空を見上げても星の一つすら、見えやしない

かじかんだ手を擦り合わせて思わずつぶやく


「さみぃっ…」

タートルネックの首元に、鼻先を埋めて、ダウンコートを深く羽織る



冬が寒くって、本当に良かった



昔俺が若かったときに、そんなフレーズの歌が流行った気がするけれど、寒くていいことなんて、俺には特に有りはしない

夏のほうが、外は晴れているし
海や、ダイビングや、自然だって楽しめる

まぁ、俺は暫くそんな浮かれた夏とはご無沙汰だけれども
それでも、半袖一枚で過ごせる真夏のほうが、暖かくていいに決まっている



見慣れたマンションのエントランスをくぐって、なれたパスコードを入力すると、無機質なカチャッという音とともにロックが解除された


カツカツと響くブーツの音

エレベーターを降りると、見慣れた部屋のドアを開けた



「あー、寒かった…」



外気よりも幾分か温かいその部屋
こざっぱりとした、玄関でブーツを脱ぎ捨てる

すっかり冷え切った体をふるっと震わせながら、フローリングの床へ上がると、控えめな音とともに、リビングのドアが、開いた

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