Last Joker

Ki 8 ページ8

『藤ヶ谷・・の、バイクの腕前は、すげぇな』

『・・・どうも』


素直に思ったことを口に出すと、
少し、不貞腐れた様にそういって、藤ヶ谷は胸ポケットから、先ほど盗んだ宝石を取り出し、
俺のほうへ投げてよこした


『アンタがいなかったら、きっと死んでた。それは、やるよ』


ぶっきら棒にそういった藤ヶ谷は、俺をまた真っすぐに見つめてきた

手のひらの、キラキラと美しく輝く宝石を、ゆっくりと見下ろす
深い青が手のひらで揺れる

そこに映る自分の瞳・・

ふ・・面白れぇ

久しぶりに、こんなゾクゾクしたぜ・・・

俺は思わず唇を舐めた



俺を殺してやると息巻いて、その俺を連れて、華麗に逃げ切った目の前の男
その癖に、用心深く、思慮深い

単純に、興味がわいた


『おい、藤ヶ谷。これはお前にやるよ』


宝石を、藤ヶ谷のほうに向けて掲げてみせた



『そのかわり』


ソファから立ち上がって、一歩ずつ、ベッドに寝ていた藤ヶ谷のほうへ近づき、その側へ腰かけた
キレイな顔を見つめると、藤ヶ谷の切れ長の瞳が、きらりと揺れる

その細く真っすぐな首筋を、人差し指でつッとなぞってやる



『これで、藤ヶ谷を買う』

『は・・・？』



藤ヶ谷は、急に見開いた目を、とたんに吊り上げると、嫌悪感をむき出しにして怒鳴った


『バカにすんな！お前に飼われるくらいなら・・・今殺せよっ！！』

『まぁまぁ』


いきり立つソイツの肩に手を伸ばす
華奢に見えて、意外としっかりした肩幅を、撫でた


『お前の・・その腕が欲しい。俺と・・組まないか？』

『な・・』


ベッドに起きあがった藤ヶ谷と視線を合わせて、床にかがむ



『めんどくさい上下関係はなし。分け前は対等で。俺たちが協力すれば・・もっとすげぇ世界が見られるかもしれねぇ・・どうだ？』

『アンタ・・本気で言ってんのかよ・・・』

『おう』

『・・・』


藤ヶ谷の、黒曜石のような漆黒の目をのぞき込むと、
今度はもう、その瞳は揺れず、まっすぐに俺を見つめ返してきた


『・・・どうする、藤ヶ谷？』



これは、俺の賭けだ
さぁ、面白くなってきた


『・・・アンタの名前・・北山、だったな・・・』


低く、よく通る声が部屋にこだました
藤ヶ谷の目が、ゆらりと妖しく光って、キレイな厚みのある唇が弧を張った



ずっと探していた、パズルのピースが

かちりとハマる音が、した





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初日からいきなりのお気に入り300名様ありがとうございました！

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