Ki 40 ページ40
横尾さん以外の俺達が、バッと勢いよく振りむくと、柱の陰から、黒いシャツ一枚纏った、包帯だらけの藤ヶ谷が、ゆらりと姿を見せた
その足取りはやはりおぼつかず、顔色もまだ白い
『藤ヶ谷・・お前いつから・・・』
『ん・・・最初、から・・聞こえてた・・かな』
俺が、やっとの思いで張り付いた喉から声を出すと、藤ヶ谷はその黒い瞳を揺らして呟いた
じゃぁ・・全部聞かれていたのか・・そう思うと、思わず耳が熱くなった
玉が、すっと藤ヶ谷に椅子を差し出して、そこにゆっくりと腰かけた藤ヶ谷が、顔を上げて俺を見た
『あの時、北山に・・逃げろって言ったのは、チームのためじゃない・・・』
『え・・』
ゆっくりと、その黒曜石のような黒い瞳が俺を見つめる
『お前が好きだ・・北山を失いたくなかった・・ただそれだけの、自分勝手な理由だ・・』
そういうと、藤ヶ谷はふっと表情を緩めて俯きながら笑った
無造作なままの柔らかい髪の毛が、藤ヶ谷の顔に影を落とす
『チームのための振りをして、北山を逃がしたかっただけだ・・勝手なのは俺も同じだ。
こんな勝手な奴がチームの大事なお宝を運ぶバイカーを務まらねぇと思うなら・・俺を切ってくれてかまわない・・』
『そんなこと!!!』
俺が、前のめりになって立ち上がると、横尾さんが勝ち誇ったように笑った
『はい、これでミツの脱退は却下な』
『え・・』
『で、どうする、太輔?みんな・・・?』
ぐるり、とあたりを見回した横尾さん
その彼を見上げて、藤ヶ谷がはっきりと通る声で言った
『北山を連れて、すぐに日本を経つ。俺たち二人で・・俺達JOKERの未来のための基盤を国外のアジアに作ってきてやるよ』
『え、え・・?!』
藤ヶ谷の切れ長の瞳が、ゆっくりと・・だけどまっすぐにこちらを見た
『いっただろ・・・?どんな時も、お前を連れて逃げるのが・・俺の使命だ』
『っ・・・藤ヶ谷・・』
そういった藤ヶ谷は、俺を後ろに乗せて走っている時と同じような、妖しく優しい表情で此方を見た
藤ヶ谷の言葉に、鼻の奥がツンと詰まって・・言葉が出なかった
その言葉をかみしめて、目の奥が熱くなっていくのがわかった
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ピンクピーチ(プロフ) - keitaku125さん» チームワークと、藤北の甘酸っぱい恋模様と、どちらも楽しんでいただけるよう、続編も頑張りたいと思います^^ (2020年6月11日 17時) (レス) id: ef49e46d66 (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - まりぶさん» ありがとうございます!次のおはなしもどきどきはらはらでたのしんでいただけるように、構想熟考中です^^ (2020年6月11日 17時) (レス) id: ef49e46d66 (このIDを非表示/違反報告)
keitaku125(プロフ) - 続編見たいです!7人のチームワークも好きでしたが両思いなってからの藤北のコンビと信頼感が大好きでした。続編がどんな感じになるのか楽しみです! (2020年6月10日 21時) (レス) id: 533dfc9d96 (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - みちゅどんさん» ストーリー柄ハラハラドキドキな展開が多いですが…次もそうなると思います(笑)続編も、楽しんでいただけるよう頑張りますね! (2020年6月10日 19時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - nanacoさん» そう言っていただけて嬉しいです!!続編も、気に入っていただけるように頑張って執筆します^_^ (2020年6月10日 19時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2019年11月14日 16時