Last Joker

Ki 39 ページ39

みんなの中に、暗い空気が流れる
だけど、それと裏腹に俺の心はなぜか落ち着いていた

現実味がないせいなのか…


『俺は、かまわねぇよ・・万一、つかまってもお前らの事は、死んでも吐かねぇから』



俺がそういったとき、横尾さんがつかつかと俺の前に歩いてきて、まっすぐに俺を見下ろした

ピッと、その細長い指が二本たてられた





『二年だ』

『え・・』

『二年やる・・・その間に、ミツに基盤を構築し直してきてほしい』



横尾さんの言葉の意味が分からずフリーズしていると、黒縁眼鏡の奥の瞳がふっと笑った




『なぁ、みんな聞いてくれ。俺は・・Jokerが結成されたときから、いつかもっと大きな舞台でやりたいと思っていた。この7人ならできる』


堂々と話し出す横尾さんの瞳には光が見えた


『狭い日本には限界が来る。もう、7年だ・・狭い日本はそろそろ飛び出して、世界に挑戦しねぇか？』

『え・・世界・・・？』



弟たちが、呆然とその顔を見た


『あぁ、そう・・俺は個人的に、アジア辺りがいいかなと思ってた。産業と金融経済の発展・・これからのドル箱だ。たとえばそう・・台湾とか』


『た、台湾？！』



思った以上に素っ頓狂な声が出て、自分でもびっくりした


『でも、いきなり乗り込んで、勝ち上がれるほど甘くはない。だからミツ、骨休めがてら、先に行って、基盤を築いてきてほしい。
金の動き、闇の世界のネットワーク・・現地でしか得られない情報は5万とあるアジア市場のお宝が集まる裏ルートをつかんで、一気にモノにする。ミツなら、できるだろ？
どうせ日本に居たら、お前はいつか捕まる。このまま走り続ければ、いつかどこかにたどり着くなんて・・悠長な戯言いってる暇はない。
お前たちの腕が本物か・・・試して来いよ？』


『え・・・』

『それでも、ミツが辞めたいっていうなら、その時は・・俺は止めない』



横尾さんは言い終えると、口角を上げて、自信ありげに笑って見せた




『確かに・・キタミツは日本に居たら危ないっていうのは・・そうだね、横尾さんのいうとおりだよね』


宮田が、静かに頷いた



『え、でも待ってよ！いきなりミツ一人で国外に行かせるなんて危ないよ！！』

千賀が、取り乱したように横尾さんを見た




『だからいったろ・・おまえ達、って』

『え・・・』



横尾さんが、ふっと目を細めて笑って、スッと息を深く吸うと後ろの柱のほうを振り返った



『それでいいだろ・・・！太輔？』


『？！』

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