Last Joker

Ki 26 ページ26

『おい、その汚ねぇ手、離せ』


諦めかけたときに低く、声が聞こえた瞬間だった


パンっという乾いた銃声と共に、目の前で俺に銃を突き付けていた男が、どさっと地面に沈んだ


『あ・・・な、んで・・・』


男が倒れると同時に開けた視界

目の前には、黒いコートに身を包んだ、細身の端正な顔立ち
よく見慣れた、その顔は



『お前が、来ないから・・』

『っ・・・藤ヶ谷・・』



俺の前に立ちはだかる様に、俺に背を向けた藤ヶ谷が、残りの男たちに向けて銃を構えた

その・・いつもバイクから見ていたはずの背中が、広く見える



『お前らと遊んでる暇はねぇ・・ソコどけ』



銃を構えて、低く呟いた藤ヶ谷の声が部屋に響く



『おい、たかが二人だ・・』


藤ヶ谷に睨みつけられた残りの男たちが、俺達に向けて銃を構えた



『おい、北山・・・』

『っ・・』

『まだ、やれるか？』


藤ヶ谷が、男たちを真っすぐに睨みつけたまま、背中から俺に声をかけた



『舐めんな、当たり前だ、ろ…』

『ふっ・・』


藤ヶ谷が、横顔で口角を上げた、瞬間、俺達は背中合わせの状態から、駆けだした


燻る火薬の音と、銃声

久しぶりの、激しい銃撃戦

こっちはたった二人
なかなか減らない敵の数



あまり手間取っている場合ではない

これ以上応戦して、警察が駆け付けてきたら、厄介だ

ジンジンと痛む肩の傷を、グッと抑え込んだ




『きたやまっ危ない！！』


不意に、藤ヶ谷の声がして、振り返った瞬間



『っ・・！』


先ほど、俺に銃口を突き付けながら藤ヶ谷に撃たれて、虫の息だったはずの男が、地面から俺のほうへ銃を向けていた

その間に、立ちはだかるようにして、藤ヶ谷が・・・



『ふ、ふじがや！！！』


藤ヶ谷の身体が、急に俺の目の前に舞い降りるように現れて

いつもの細身の黒いコートの裾が翻った



パンっ

という乾いた音と共に、がくん、と膝から藤ヶ谷の細い身体が地面に沈んだ

全てが、まるで一瞬のように・・




『藤ヶ谷っ！！』


地面に倒れ込んだその身体を咄嗟に抱き寄せた

ぐったりとした状態を抱き起こすと、黒いジャケットの上から、胸元に赤い染みがじんわりと広がっている
その真っ赤な広がりに、思わず呼吸が詰まった


『あ・・おい・・ふじ、』




パンッ



もう一度、乾いた音がした瞬間、藤ヶ谷の右腕が、俺の腕を強く引いた

身体ごと抱き寄せられるようにして、そのままどさっと二人で地面に倒れ込む

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