Last Joker

Ki 17 ページ17

それから、当たり前のように、そのゴールドのチェーンは、俺の首元で揺れた

幾夜も、藤ヶ谷と、アイツらと、難攻不落と言われる城を手掛けては、お宝を奪い去った


夜の街に鳴り響く、エンジン音

アイツが、来た



タイミングはいつもピッタリ

黒いロングコートの裾をなびかせて、夜の風を切るように走ってくるお前の姿を目の端で捉えて、いつものように右手を差し出す

パシッ…

掴まれるその手と、ふわりの空中に浮く身体

その瞬間だけ、スローモーションのように見える景色
一瞬だけ、空を舞う俺の身体
そのまま藤ヶ谷にしっかりと抱えられて一緒に夜の街を駆けた


俺は、今まで、何度この手をとってきたのだろう
藤ヶ谷は、何度俺のことを抱き止めてくれたのだろう
数え切れない夜を超えて、俺達はまだ、遠く果てしない夢を追い続けていた

明日はまだ遠く、滲むようだけれど…いつか、お前と、アイツらと、もっと遠くまで…



月夜が照らす、まっすぐに通った鼻筋が描く横顔を見つめた
相変わらず、何年経っても、その眼差しはキレイだった


『今日も、楽勝だな』

バイクのエンジン音を身体で感じながら、藤ヶ谷の背中に語りかける

『北山…最近、肉食いすぎ』

『へ？』


途端に、俺の方を見て、藤ヶ谷がそんなことを呟いた


『抱き上げる時、少し重くなった。これ以上太ったら、バイクのスピードに関わる…痩せろ』

『は？！そんな変わってねぇって！』

『嘘つけ…2.5キロ』

『え…？』

『2.5キロ、重くなったぞ』

『お前…エスパーか？！』


見事に増えた分の体重を言い当てた藤ヶ谷に、身を乗り出して顔を覗き込んだ


『そんくらいわかんだろ…いっつもお前しか乗せてねぇんだから』

『…』

『それ以上太ったら、お前のこと乗せねぇから』

『おい！俺以外、バイクの後ろは乗せねぇんじゃねーのかよ！仕事にならねぇ！』

『…だからだろ』



ふと、藤ヶ谷が横顔で振り返ると、少しだけ視線を合わせて、ボソッとつぶやいた

『俺の後ろは、お前だけだ…だから、さっさと戻せ』

そういうと、そのまま藤ヶ谷は振り返ることなく、バイクのアクセルを踏み直した
スピードを上げて、夜の街を駆け抜けていく俺達


『はいはい、わかったよ』

『…ん』

猛スピードで変わっていく夜の町並みのネオン
夜の風は、少しだけ冷たくなってきていて、アイツと出会ってから、早くも、

７年目の冬を迎えようとしていた

Ki 18→←Ki 16

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す