±10cmから見た日常 (ページ28)

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side F ページ28

「この続き、あそこでヤル？」

「ば・・」

「嘘だって。そんな目で期待されても困るんだけど？」

「藤ヶ谷のバカっ！！」

俺が視線だけで、例のホテルをさすと、とたん、腹にグーパンチを食らって、
近づいていたはずの俺たちの距離は、いつの間にか、いつも通りに離れた

ふと、横を向いた北山の顔に視線をおとす

「っ…少し、冷えてきたな」

そういった、横顔を、ただ見つめた

「あぁ…そろそろ、行く？」

「また…来たいな」

無邪気に、また来たいと、そういったお前

それは、また二人で来たいという約束になればいいと思う
そして、それを果たせる日が、早く訪れますように

ふと、自分の横顔に北山の面影を重ねた

なぁ、お前は、俺達の体がもとに戻っても、またここに俺ときてくれるのかな?

理由がなくても、肩を並べて、
俺とこの浜辺を同じ速さで、歩いてくれるだろうか

無邪気に笑い合いながら、波打ち際ではしゃぐ姿を、また見せてくれるのかな

「ふじがや…？」

そう呼びかけた、北山の目を見て、ふと、
そんなことを思った

また一緒に、来ような

その一言を飲み込んで、俺は
オレンジに染まる、北山の横顔をただ見つめたまま、少しだけ笑ってみせた

この、気持ちを伝えられる日が、きますようにと、沈む夕日に思いを馳せて