side Ki ページ41
人間の脳は、都合がいいもので、
忘れることができる記憶と、ずっと覚えている記憶がある
藤ヶ谷は、忘れることができたんだ
あの忌まわしい事件から
『あ、あぁ、い、やだっ・・!』
『ふじがやぁっ!!』
思い出すのは、あの男の冷たく嗤った顔と、
ボロボロになった藤ヶ谷の泣き顔
『く、あっ・・あぁ!』
『フフ、いい顔・・』
俺を弄びながら、笑ったアイツと、苦しそうに、血を吐いた藤ヶ谷の真っ赤な姿
あの、悪夢から解放されるなら・・それでいいじゃないか
ここ数日は、藤ヶ谷の病室に毎日顔を出すようにしていた
藤ヶ谷の回復が嬉しかったし、記憶を失っていても、ここ最近のこと以外は覚えているから、特に会話に支障はない
すこしでも、藤ヶ谷の側に居たかった
こんな、汚い俺でも
「は、あ・・」
疲れたとか、辛いとか
アイツらの前では、意識して言わないようにしている
だけど、こうして自宅に帰って、一人になると、不意にため息が漏れる
心配させるのは、これ以上ごめんだ
ただでさえ、俺と藤ヶ谷を気遣って、アイツらだって、すごく辛い思いをした
ニカの、辛そうな顔を今でも思い出す
アイツには、痴態をさらした直後の俺を見られたから・・
その、悲しみに歪んだ表情が、今も脳裏に張り付いていた
ピンポーン
不意に、鳴り響く呼び出し音
「え・・」
見慣れた、ハットと、その色白の綺麗な顔が、モニター越しに笑った
「ミツー俺だよん」
「玉・・どしたの」
ロックを外して、部屋へ招き入れると、紙袋を持った玉が、ひょっこりと顔を出した
「んー、最近ミツ、外食もしてないみたいだし?おうちデートしよっかなって」
そういって、高そうな肉ののった弁当を広げた
「ミツこういうの好きでしょ」
そう言って笑った玉の顔は、昔と変わらずにあどけなくて、その姿に、張り詰めていた気持ちの糸が、少しだけ緩んだ気がした
「ありがとな」
あまり、食欲がなかったここ最近だけれど
玉の気持ちが嬉しくて、俺は全て綺麗に平らげた
「泊ってく・・か?」
気づけば、もう深夜を過ぎていて、
不意にそう聞くと、玉は、ニッコリと微笑んだ
「えへ。実はそのつもりだった」
「ったく」
ちゃっかりと、歯ブラシなどの備品をバッグから取り出した玉を見て、
俺も、笑った
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ピンクピーチ(プロフ) - あこさま!いつも温かいメッセージありがとうございます!励みにさせてもらってます!!もう少しで幸せな二人編に突入するので、もう少し頑張ります^_^ (2019年11月15日 15時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - こんにちは!更新されるたびに泣きながら読んでます。みんなの心の傷が癒えてふたりがしあわせな時間を早く過ごせることを願ってます。ピンクピーチさまもしんどい部分の更新大変だと思いますががんばってください!応援しております^^! (2019年11月15日 14時) (レス) id: c75777a11f (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - みってぃーさん» はじめまして^_^日課にしていただけて大変光栄です!そして、温かいお言葉!こちらこそ泣きながら読ませていただきます!!これからも、更新励みますので、良ければ読んでやってください★ (2019年11月11日 18時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
みってぃー(プロフ) - いつも更新ありがとうございます!毎日更新されているか確認するのが日課になってます。そして、更新された話をここ最近泣きながら読んでいます。作者様の作品はどれも心に刺さるものばかりで尊敬しています。大変だと思いますが更新頑張ってくださいね。 (2019年11月11日 17時) (レス) id: 4e432f1ab1 (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - キスマイさん» ご愛読ありがとうございます!これからは、藤北以外のメンバーの心情も複雑に絡みながら展開していきます…また楽しんでいただけたら、嬉しいです^_^ (2019年10月27日 10時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2019年10月23日 15時