それは、タカラモノ 〜序章 疑惑〜

side M ページ36

「お世話になりましたー！」



担当の看護師さんに挨拶を済ませて、荷物をまとめた

ニカと千ちゃんに、挨拶してから退院したいと思い部屋をのぞくも、二人の姿はなく、ベッドサイドに飾られた紫の花が

揺れていた


「あれ・・」


どこへいったのか

トイレかな



二人も、徐々に回復しているし、週末には退院できるかな


あ、そうだ
このまま玉に会いに行こうかな

アイツ、今日仕事だっけ

あぁそうそう

まえあし組の撮影だったっけ・・




ニカセンの姿を探しながら、廊下をうろつくと、バタバタと白衣を着たスタッフがかけていく

やだな

急患かな


病院の毎日は忙しい

サイレンはひっきりなしだし、患者も多い

病院は決して楽しいところではなく、笑顔で退院していく患者さんを見送るだけではないことは、

ここで働くスタッフの人たちの懸命な仕事を見ているとそう実感させられて、同時に、世の中において、大変だけど、過酷な現場で人々の役立つ仕事をしている彼らに頭が下がる思いだった





ストレッチャーに乗せられた、若い男性の横顔が見えた

カーブを切って、こちらへ向かってくる

あまり、そちらを見ないようにしていたつもりが、ストレッチャーから、だらりと垂れた
その人の手首の白さにぞっとなった



「すいませんっどいてください！」



看護師さんの声に、壁に張り付く

わ・・血、ついてるよ・・




思わず、目を逸らしたはず・・だった




けれど、その瞬間、俺の世界は止まった

手首に、見慣れたゴールドのブレスレットがきらりと光った




その、ストレッチャーに乗せられていた人は




俺が世界で一番、会いたかった、


玉の顔だった

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