それは、タカラモノ 〜序章 疑惑〜

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わったーが怪我をしてから数日が過ぎた

最初は警戒していたメンバーや周りも、徐々に普通の生活を取り戻してきた



「ニカ・・？」


千賀の声に、視線だけ上を向いた


「ねぇ・・なんかあった・・？」

「なんも・・ないよ」

「そっか」



千賀が納得していないのは、百も承知だった
俺を窺うようにこちらを見ては、悲しそうに目を伏せることも気づいていた


俺が口を閉ざしていることを、無理やり詮索してこないことは、ありがたい反面俺を苦しくさせた





『約束・・破ったら、どうなるかわかるよね？』




その悪魔のささやきに、魘される

薄笑いを浮かべた、アイツが俺の脳裏によぎる

ふざけんな




約束を・・破った覚えはない

そもそも、アイツはハナから俺たちの事・・



「ニカ？」

「ごめん・・食おっか」

「次、あんまり時間ないから急がないと」


わったーが、目の前に置かれたロケ弁をテーブルの上に配ってくれて、
俺はそれを受け取って蓋を開けた


「ってか、わったーけが人なんだからそんな動かない！」

「あ、横尾さん、開けにくいでしょ」


宮田が、けがをしたわったーを気遣って蓋を開けてやっていた


「も、そんな大げさなケガじゃないよ」



そう言いながらもうれしそうなわったーの横顔を見つめながら
ふっと笑みがこぼれた


こんな、他愛もない日常が崩れていく音が、背後まで近づいていることに

俺達は気づかなかった

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