それは、タカラモノ 〜序章 疑惑〜

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「キスマイラジオはっじまるよ〜！！」


気づいたら このラジオの仕事ももう何年も続けさせてもらっている

メンバーが週替わりで担当するから、それほど頻繁に自分の担当が回ってくるわけではいけれど
メンバー全員でいるときには気づかなかった些細なことも、この狭いブースで数人でいると
出会ってからもう何年もたつのに、いまだに


あ、コイツこんなところあったんだ

って新たな発見があったりして
だから俺はこのラジオの仕事が結構楽しみだったりする

向かいに座る 出会ったころとはだいぶ雰囲気も変わって すっかりいい大人になったコイツ

新曲の紹介をして、曲が流れ始めたのを確認してから
ヘッドセットを少しずらし、目の前の姿ををもう一度確認する

新しい引き出しに気づくと同時に
わずかな変化にも敏感になるんだ このラジオブースっていう密室にいると




「ニカ・・」


目の前の 昔よりもだいぶ落ち着いたであろう彼の名を呼んだ
目を伏せていた二階堂が 視線だけ俺のほうを見た


もしかしたら 今度発売されるこの曲に真剣に聞き入ってただけかもしれない
だけど、俺にとってはそんなちょっとしたしぐささえ、この違和感を裏付けてしまう

いったんラジオがオフになると、きまってしゃべり出すのはいつだってニカのほう
特に俺が相手の時はなおさら


「なんか、あったか？」

「え・・？」


俺の不意打ちの質問の意図が読み取れなかったようで ニカが俺にほうへ向き直って目を見開いた

「いや・・お前なんか元気なくない？ラジオの喋りとかは・・いつも通り声張ってる感じだけど、空元気っていうか・・もしかして具合でも悪い？」

「っ・・」


正面に座るニカは、正直熱があったり腹が痛そうには見えないけど、
ラジオ収録が始まる前から感じていた違和感は、始まっても拭えず、むしろ俺の中では少しづつ強くなった
具体的に説明はできなくても いつもより無理しているような そんな雰囲気を感じてしまうのは
ニカがもっと幼かったころからずっと、兄貴的なポジションで見つめていたからかもしれない


「そっかな？大丈夫だよ？？変な心配かけてごめんね？」


ヘッドセットをいじりながら、ニカが笑顔を見せた


「・・そっか。でもなんかあったら言えよ？」

ありがとう、といって、またラジオの進行表に目を戻したニカを見ながら
俺の不安は 確信に変わった

俺は嘘をつくのは下手だけど人の嘘には結構敏感だったりする

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