それは、タカラモノ 〜序章 疑惑〜

side Y ページ17

誰かに、恨みを買った覚えはない

愉快犯？

わざわざ、俺の触ることがわかりきっている魚のなかに刃を仕込むんだ
そんなのどう考えても


故意に

決まっていた



あそこに忍び込める人間はそう多くない

TV局の人間、俺達出演者、俺達の周りのスタッフ



誰も、疑いたくないけれど・・
愉快犯なんてありえない



「ワタ・・」


不安そうに俺の顔をのぞく太輔を宥めるように、右手で太輔の背中をポンポンと擦った

メンバーに心配をかけたくない一心で、いたずらじゃないかと嘘を言った



おそらく、ミツは納得していない


表情を見れば、わかる

だけど、これ以上事を荒立てたくなくて、目で合図すると、それ以上ミツは何も言ってこなかった
　
考え込むように目を伏せたミツの背中を黙って見つめた




収録の内容は、あらかじめ決まっていた

俺が目の前で魚をさばくことも、すでに決まっていてすべて台本通りに事は進んだ

あの時に、魚の内部に忍ばされていた刃を、犯人は俺に向けて忍ばせたことは明白だ




目的は、わからない


だけど・・俺を、明らかに狙っての犯行だろう





これ以上・・何も起きないことだけをただ、願った俺の願いは、
数日後、無残にも打ち砕かれることを




俺は予期しなかった

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