意地っ張りな君へ

side F ページ6

「ただいま！！」



部屋の電気がついているのがわかったから、あわててエレベータに乗り込んで
勢いよくドアを開けた


「・・あれ？」


だけど そこには昨日同様に 俺が期待した笑顔はなくて
おまけに テーブルの上にもベッドの上にも 北山の痕跡は一つも残っていなかった


「消し忘れかな・・」



俺のいない間に 荷物だけおきに来たのかな






今日は久しぶりに 早く終わったから もしかしたら会えるかもしれないって
車を飛ばして帰ってきたんだけど
最近 全然会えない


会いたいって言えばいいのかもしれないけれど
何時に終わるかわからない俺を 縛り付けておくのもなんだか申し訳ない


俺のために毎日待ってろなんて そんな束縛 きっと北山は嫌がると思う・・
俺と違って、交友関係の広い北山は、きっと俺じゃなくても持て余した時間を楽しく過ごせる相手がたくさんいるだろうし





スマホの画面に目を落とすも、そこには期待する人物からのメッセージはない

「・・・」



コートを脱ぐのも忘れて、必死でその愛おしい名前を呼び出した

もう、寝ちゃってるかな・・

愛らしい寝顔を思い出すと、それだけで胸が温かくなった



その寝顔を抱きしめて、眠りたい
そうしたら、それだけでこの満たされない胸がいっぱいになるのに





呼び出し音が鳴り響くまま 反応がない

ダメか・・


諦めて 電話を切ろうとしたその時だった




「もしもし？」

「・・・え？」

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