意地っ張りな君へ

side Ki ページ36

見慣れたマンションのエントランス
ロックを解除されて、数日前と同じように部屋へ入った

久しぶりにみた藤ヶ谷は、なんとなく疲れているようで、顔色も悪い気がした



「ごめん・・こんな深夜に」

俺の言葉に、小さく首を横に振ると、ちらりとこちらを窺うようにして視線を合わせてくる

小さな唇が、動いた


会いたくて、会いたくて仕方なかった、一人のオトコが、目の前にいるという事実が
俺の心臓をこんなにも苦しくさせる



「俺・・受け取らないから」


差し出された、黒いカードキー

それは、数日前に、俺がこの部屋へ置いていったものだった
目の奥が熱くなる


「俺、北山と別れるつもりないから」


真っすぐな、視線


「フラれたのに、みっともないけど・・北山は・・もう、俺の事好きじゃないかもしれないけど・・俺は・・」


言葉に詰まったように、苦しそうな表情をみせる藤ヶ谷の言葉に
思わず、息が詰まる


「離すつもりないから」



珍しく、強引に俺の手を引くと、その胸の中に閉じ込められた

あの日の夜よりも、もっと熱を帯びた切れ長の目が、ゆらゆらと揺れる




「俺から離れられない身体にしてやるっ・・」

「や、ちょっとまって！！」


リビングへ続、廊下の壁
背中がぶつかって、痛みが走った

そこへ、おさえつけるようにして、身体をかぶせてきた藤ヶ谷の目

唇を寄せてくる藤ヶ谷の身体を、押し返した

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