意地っ張りな君へ

side Ki ページ27

「お邪魔します・・」


結局、昨晩は大倉と長電話して、いろいろと説得されたけれど、俺はこうして藤ヶ谷の家へ私物を回収しに勝手にやってきている

アイツは仕事だから不在なことはわかっていて訪れているにもかかわらず、藤ヶ谷の部屋は、その主がいなくても何となく藤ヶ谷の香りがするようで、
胸の奥がキュッと切なくなった

つい、この間まで、この部屋で二人で笑いあえていたはずだったのに

俺の名前を呼んで、後ろからギューギューに抱きしめられたまま、何度かそのまま眠ってしまった、ソファ

押し倒されるたびに、ドキドキしていて、心臓が口から出るんじゃねーかって心配した

真っすぐに見つめられて、キスされると、そのまま藤ヶ谷のモンにしてくれないかな、なんて柄にもなく思ったりした



抱き心地がいいなんて、男に言う言葉じゃねーだろうと不貞腐れるふりをしながらも、
眠りにつく前に、俺の首筋に唇を寄せて、気持ちいいって呟く藤ヶ谷が好きだった

恥ずかしすぎて、一度も振り返ったことはなかったけれど



一度くらい、ありがとうっていえばよかった






藤ヶ谷に連絡を取って、あれってどういう意味？って確認すればいいのかもしれない

だけど、そもそも電話をシカトされないか、とか
もう別れたいってことに決まってるじゃん
なんて言われた日には、俺はそれこそ二度と立ち直れない気がした


それなら・・もう、この気持ちに蓋をして、潔く身を引こう

藤ヶ谷と、恋人として過ごしたこの半年間は、ただの夢だったと思えばいい
そもそもが、夢物語みたいに話だったんだ

そうして、アイツとは、今まで通り、最高の仲間で、シンメで・・ただのメンバーだと思っていけばいい
そうしないと、キスマイすら、守れなくなる・・


洗面所の電動歯ブラシ、ヘアワックス・・ベッドサイドの棚に置きっぱなしていた、スマホのバッテリー

藤ヶ谷との思い出が残る部屋には、細かなところに俺のものが置いてあって、それと同時に、藤ヶ谷とここで過ごした
他愛のない日々を彷彿とさせた

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