意地っ張りな君へ

side F ページ25

「なに、その顔？」

「・・もともとだけど」

「あら、ご機嫌斜め」



目の前に座るワタを、じろっと睨む
いや、決してワタのせいじゃないことは百も承知なんだけど
親友の顔がわかりやすく、変わった


「なんかあったでしょ、太輔すぐ顔に出るから」



ラジオの収録が終わって、帰り支度をしていたはずなのに、座っているを俺を見るとクスクスと笑う、ワタ

テーブルに両肘をついて、顔をうずめるようにしてワタを見上げた


「俺・・もうダメかも」

「うちのキングが、随分弱気だねぇ」


ワタには、唯一北山とのことを話していた

なんとなく、メンバーには気を使わせたくなくて、秘密にしておこうかと思ったけれど、
親友のコイツには、やっぱりカクシゴトをしたくなくて、俺が逆の立場なら話してほしいなと思って、打ち明けた


その時、渉は、

よかったね、おさまるところに収まって、

そう微笑んで祝福してくれた


私情は挟まない、公私混同はしないからといいつつも、北山のことで何かあると、
すぐへこむ俺をいつもさりげなく気遣ってくれたのは渉だった





「俺・・北山に、嫌われたかも」

「え、なんで？」

「・・ワタぁ・・」


俺に、おいでと手招きする親友の手に、飛びついた



＊



「そりゃぁ、太輔もミツも意地っ張りだからね〜」

あのまま、ワタに泣きついた俺は、結局こうしてワタの家に上がり込んでしまっていた

先日の夜の出来事を、洗いざらい話すと、少しだけすっきりした

「太輔のほうから連絡しなよ、ごめんって」

「だって」

「だってじゃないの」

「だって、ジャケット返したのに何も言ってきてくれないし」

「自分からすればイイだけじゃん」

「そうだけど・・」

「だけどなに？」

「もう、好きじゃないって言われたら、どうしよう・・」

「はぁ・・本当、ミツのこととなると、なんでそう不器用なの？」

「だって・・」

「ミツも太輔も、お互いのこととなると強情で意地っ張りで不器用でどうしようもないんだから」

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