意地っ張りな君へ

side Ki ページ3

「舞台やってる最中はアイツも忙しいからね」


「で、俺なん？」





なじみの居酒屋で 瓶ビールを片手に互いのグラスへ黄金色の液体を注ぐ



「別に、かわりってわけじゃねーよ、お前と飯行きたくなっただけ！」

「それは、おおきに」



目の前で おどけて笑って見せた大倉にグラスを差し出す


「まぁ、一人が寂しいっていうのは、ほんとだけどさ」

「どんだけ寂しがりやねん？いい年こいて」

「うるせーな！お前だって同じ年だろうが！！」



大倉と、こうやって会うのは珍しいことではないし

お互いの近況を報告したり 仕事の話をしたり

俺にとっては 数少ない息抜きのなかでも
心の底から楽しめる時間の一つ

ついでにいうならば、内密にしてる藤ヶ谷との関係を話せるのも、コイツだけ


「せやけど、今日でよかったんか？もしかしたら早く帰ってるかもしれへんで？」



運ばれてきた料理を口に運びつつ、大倉が俺を窺った


「ん〜、わかんねーけど、昨日も日付変更まで待っても帰ってこなかったし、多分今日も遅いんじゃね？最近仕事以外でほぼあってねーし・・」


脂ののった肉を箸でつつく


「それに・・かといって会いたいって連絡もねーし」




ビールで肉を流し込みながら、コトンとグラスを置くと同時に漏れるため息


「お前、自分で言ってて暗くなるな」

「わりぃ・・・」



わかってるんだ

仕事なんだから仕方ない

同じ世界で生きている者同士 しかもメンバー

別に定期的に仕事では顔を合わせているし



ドラマが終わってすぐに舞台の仕事が入った中、多忙になるのもわかりきっていること

気にしたって始まらない




お疲れ様って笑顔で迎えてあげるのが俺の務め



「でもさ・・何時に帰ってくるかもわからない、アイツを、ただ一人アイツの部屋で待っていると・・ね」


「お前なぁ、新婚の嫁さんじゃないんやから」


「わかってるよ！！」


「どれくらい会ってへんの？」


「グループでの仕事のぞけば、もう一月近いかな・・会えても、向こうが帰ってきたときに、ちょっと顔合わせる程度。
台本読んでるアイツの邪魔しちゃ悪いと思って、俺もすぐ帰ったりとかして・・ゆっくり過ごすって意味では一月位できてねーわ」


「ほんまにかぁ、藤ヶ谷君も忙しいんやな」




仕事があるのはありがたいこと

アイツがドラマ決まったときは俺だって嬉しかったし
それは本心だけれど


会えない時間が 不安にさせる

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