意地っ張りな君へ

side Ki ページ17

久しぶりに自分自身のベッドの上で朝を迎えた気がした
時計を確認すると、もう昼過ぎで、今日の仕事の入りが午後からでよかった

夜通し飲んで、移動車の中で仮眠をとるか、藤ヶ谷の帰宅を待ちながら、藤ヶ谷の家で仮眠をとるような生活が、ここ最近はずっと続いていたから


けだるい身体からは、自分の匂いしかせずに、俺ももうおっさんだなーと自嘲気味に笑った
藤ヶ谷に抱きしめられたまま、迎えた朝は、ムスクの甘い香りが鼻を掠めた

そんな朝は、もうしばらく過ごしていない



スマホを確認しても、やっぱり藤ヶ谷からの連絡は来ていなくて、
俺が昨晩アイツの家を飛びだしたことも、大人げなかったかなと思う反面、追いかけてきてもくれないし、連絡もくれない藤ヶ谷に、
ちょっとだけ心が痛んだ

そもそも、アイツは本当に俺の事、好きなのかな



キモチと、身体が必ずしもリンクするわけじゃないとは思いながらも、仲間以上の特別な関係として一緒に過ごすようになって
半年もたつにもかかわらず、キス以上の関係に踏み出さないのは、やっぱり藤ヶ谷がどこかで俺との関係を戸惑っているからなんじゃないのか

アイツに触れたいと思ってしまう俺は、欲張りなのだろうか
隣に居るだけで、十分なはずだったのに




「あー・・テンション下がるわっ・・」


独り言をつぶやいても、どうしたの？と心配してくれるアイツは、隣に居ない

自分自身の家なのに、いたたまれない雰囲気なのは何故だろう



けだるい身体を無理やり起こしながら、それでも日常をすごさなければいけない

そろそろマネージャーが迎えに来る時間だと思いながら、バスルームへ向かった






＊





「おはよーございます・・」


迎えに来た車に乗り込む

今日は、一人仕事だから、藤ヶ谷と顔を合わせることはない

会いたいはずなのに、今は会いたくない

昨日、アイツの家を飛び出したのは、俺自身で、出て行けと言われたわけでもないのに感情的になってしまったことは、大人げないと思う
だけど、痛くもない腹を探られて・・藤ヶ谷に、少しでも疑われるような言葉をかけられたことが、哀しかった

俺は、いつだって・・こんなに、アイツを思っていたのに

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