意地っ張りな君へ

side Ki ページ13

当てもなく、歩き出して、ふと歩みを止める
自分の頭が働いてないことに、うんざりして思わず天を仰ぐ




「そうだ・・バカだな、俺」





帰る先なんてどこにもないと思っていたけれど、自分の家へ帰ればいいだけの事だ

ここ最近は、藤ヶ谷の家へ帰るのが習慣になっていて、そんな当たり前のことすら気づかなかったな…


すっかり衣裳部屋だけど、こういう時のためにも、解約しなくてよかった





国道に面した道路まで小走りで出ると、こちらへ向かってくるタクシーのヘッドライトに手を挙げた

シートに滑りこむと、しっとりと濡れたて額に張り付いた前髪をどかしながら、久しぶりのわが家へ帰るべく、行先を告げた



バタンとタクシーのドアが閉まる瞬間、遠くから藤ヶ谷の声が聞こえたような気がしたけれど、

自分勝手に飛び出してなお、まだアイツに追いかけてきてほしいと思っている自分自身に気づいて、
そんな情けなさに嫌気がさして、俺の都合のいい勘違いに目を閉じた


藤ヶ谷の、冷めた視線と、冷たい口調だけが、いつまでも俺の脳裏に張り付いていて、雨で湿った洋服が、一層俺の身体を冷やして、心までも凍てつかせていくようで、唇をぐっと噛み締めた

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