意地っ張りな君へ

side Ki ページ8

「ん・・・」


気づくと 見慣れない壁紙と照明が目に入った

頭の奥がガンガンする
けだるい身体を起こしながら 自分がベッドに寝かされていたことに気づく



「お、気づいたか！」



大倉がリビングのほうから、ひょっこりと顔を出した


「あ・・俺、ごめん・・」

「お前、飲み過ぎやで〜、まぁ愛しの彼氏が迎えに来てくれるっちゅうから、もう少しおとなしくしときぃ」

「は・・？」

「お前のスマホに藤ヶ谷君から着信あってな、悪いと思ったんやけど心配かけるのもあれやし、うちにいるって伝えたら、なんや急いで迎えに来る言うから」

「・・・」




心配せんでも、お前ちゃんと愛されてるやんか

俺にとられると思ったん違うか？





そういうと 大倉はにこにこしながら俺にミネラルウォーターを差し出してくれた


「・・違うよ。単に大倉に悪いと思ったんだと思う」


渡されたペットボトルのキャップを握る手に力が入らない
アイツは、真面目だから、先輩の家にのこのこ潰れて泊まっている俺を放置しておけないと思ったんだと思う


「ま、どっちにしろしばらくぶりなんやし、今夜はたっぷり愛してもらい？」



含みのある言い方で 俺のほうを見ながら大倉が、俺の頭をポンッと叩いた


「・・ねぇよ」

「ん？」

「アイツとは、そういうのねーから」

「・・・？なにがないん？」

「だからその・・・」





決定的な言葉を、ごにょごにょと いいづらそうにしている俺を見て察知したのか


「は？お前ら何ちんたらしてんねん？？それともあれか？今更男同士だから〜とか気にしてるん？」


大倉がデカい声を出した

「・・違うけど！！なんかこう、淡白なんだよ、あいつは！！」



あれだけ色気を振りまいている藤ヶ谷のことだから
ソッチのほうも結構激しいもんだと思っていた


だけど いざ付き合いだしてみると

俺にキスをしたり 抱きしめては来るものの
何度も同じベッドで眠る機会もあったのにもかかわらず そういう気配は一切醸し出してこない


だからといって 俺からがっつくのもなんか違う気がして
というか 今更アイツにそんなことを言うなんて気恥ずかしくて 絶対無理


結局俺は待ちの一本で




「俺、魅力ないのかな・・？」



せっかく飲んで、いやなこと忘れるくらい酔いつぶれたのに
また振り出しだ・・

好きな奴には触れたい
そう思うのが自然だと思ってた



俺だって一線を越えるのは怖い気もするけど

藤ヶ谷とならって思ってんのにな・・・

side Ki→←side F

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す