7flavor of kiss

side F ページ47

「え、なんで…」

俺が、マンションのインターホンを鳴らすと、驚いたように、北山はその大きな瞳を見開いた


「渉に、振られて暇なのかと思って」

「え、」

「北山、お腹好かせてるかなーなんて」


目の前に、有名高級焼き肉弁当の袋を差し出すと、わかりやすいくらいにその大きな瞳は、キラキラと光った


「ビールでいい？」


一人が寂しかったのか、北山は、るんるんと音が聞こえそうなほど軽快な足取りで、グラスを並べてくれた

空いた冷蔵庫からは、北山には似つかわしくない、タッパに入れられたおかずが見えた


「ね、渉、よく来んの？」

「え…」

「ご飯、作りに来てくれるとか？」


北山は、あえてなのか、俺との前では、渉との話題に触れない
俺の前では、二人で戯れないようにしているのか
うまくはぐらかして、目を逸らすんだ


「あ、まぁ…たまには」

「へぇ…うまくいってるんだ？」

「…ふつー、だよ…」



そう言って、ふっと目を伏せると、
北山は、早く食おうぜーって、わざと明るく振る舞った


柔らかな肉を続きながら、ビールを飲む

「ここ、ついてるよ」

焼き肉のソースのついた口の端を、人差し指で拭ってやった

「へ」

「ふふっ…」

拭ったソースを、ぺろりと舐めると、ソースの甘みと、ちょっとだけ、感じる酸味

「っ…」

照れたように、頬を染めた北山は、視線を外してきた


「なに、てれてんの」

「ちがっ…」

パッと、顔をそむけると、おしぼりで口を拭った


「北山ってさ…」

「っ…なんだ、よ…」

「なんで、渉、なの？」

「え…」


北山の、箸を持つ手が、明らかに止まる

「な、なにって…」

「告白されて…ほだされた？」

「違うよ…すき、だよ…」

「ホントに？」


俺が、座っていた位置をぐっと近づけると、北山の顔がわかりやすく歪む

「なっ…藤ヶ谷、なにいって」

「本当は…別の人、思ってるんじゃない…？」

「な、やめろよ！」


北山は、わかりやすいくらいに動揺すると、顔を赤くして反論してきた

「ねぇ…そんなに、俺の気、ひきたかった？」

「お前、なにいって…」

「俺の親友をとったら、俺が、気にしてくれるかなって思った？」

「お前、いい加減にっ…！！」

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