7flavor of kiss

神に誓わずとも ページ1

テーマ: 教会でキス


少プレにて、永久結びを教会で歌い上げるシーンが、あまりにもエモーショナルでしたので、そこからお話を作らせていただきました
オールF視点

**********************



「こんなところにいた…」


探していた、愛おしい小さな背中は、温かなキャンドルで彩られた聖堂の中、ただ一人で、まっすぐ前を見つめて佇んでいた

俺が後ろから声をかけると、北山がゆっくりと振り返った


「ここ、みてたの？」


俺の言葉に、北山は黙って頷いた

少しずつ日が沈んできて、正面のガラスからは、軽井沢の緑が美しく覗く

木目の壁と、三角の屋根を象る線、揺らめくキャンドル、今にも音色を奏でそうなハープ、全てのものがぬくもりに溢れていて、心が穏やかになっていく気がする

これから行われる収録のために、ところどころバージンロードの片隅に機材が置かれているが、それさえなければもっとエモーショナルなんだろうな


「この教会…キレイだよね…」

俺がそうつぶやくと、北山は少し俯いたまま、小さく

「そうだな」

と相槌をうつ

「ここで、愛を誓う新郎新婦は素敵だね」


「っ…」



俺の言葉に、何も発さずに、北山はただこちらをチラリと伺いながら、笑った

だけど、その笑顔が、その瞳が、微かに揺らいだのを俺は見逃さなかった


「北山…なんかあったか？」

「なんもねぇよ」


そういって、その大きな瞳を逸らす

俺は知ってるんだ

北山が何もないって言うときは、強がっているときなんだって


「ごめん…休憩もう終わるよな？藤ヶ谷、俺のこと呼びに来たんだろ？そろそろ戻ろっか」

そういって、ぎこちない笑顔を向けると、俺の横をするりとすり抜けていこうとする


「待って」



そんな、切ない顔で俺を見ないで
なにが、その笑顔を曇らせてる？

辛いときには、真っ先に頼ってほしいのに

なんでお前はいつもそんなに一人で抱え込むの？


「北山…」

その肩を掴んで、俺の方を振り向かせると、微かに赤みのさした大きな瞳が、俺の方を見つめながらゆらゆらと揺れる


「まだ、時間大丈夫だから…俺が勝手に北山を探してただけ。俺には、ちゃんと言って何かあったんでしょ…？」

「っ…」

「どんなことでも聞くから」




ビー玉の瞳が、儚く揺れ、少しの沈黙が俺たちの間を支配した

急かすでもなく、ただ北山を見つめていると、俺の思いが届いたのか、その唇が微かに動きはじめた

F2→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す