僕ハ君ガイテ愛ヲ知ル

F 14 ページ14

メンバーに余計な心配をかけたくなかったけれど、傷の範囲が広かったことと、動きにも支障が出ているせいで、隠し通せる怪我でもなく

事前に、メンバーとスタッフには状況を説明した

この事実を伝えながら、自責の念で胸が苦しくなった

だけど誰ひとり、俺を責める奴はいなくて、みんな口ぐちに、心配の言葉やねぎらいの言葉をかけて気遣ってくれた
こいつらが、優しいことも、そういうやつらなのも、昔っから知っている

だからこそ、本番を前にして、そんな気持ちを抱かせてしまった自分が情けなかった



メンバーが、不安そうに俺の話を聞きながら、いろいろと気遣ってくれている中、

北山だけは、ただ黙って俺の話を聞き終わると、

「そうか…亅

とつぶやいて、それ以上、何も言わなかった



アイツに、もっと心配してほしいとか、そういうことじゃない

きっと、おそらく俺が逆の立場だったら、同じことをしたと思う

アイツとは、付き合いが長い分、そういうところだけはよくわかるから



俺の悔しさも、やりきれない気持ちも全部わかったうえで、アイツはあえて、俺に何も言ってこなかったんだと思う
俺の話が終わってすぐに立ち上がると、スタッフと真剣な顔でいろいろと相談している北山の背中を遠くで見つめながら、そう思った


北山は、常に先をみているから


怪我をした俺をあれこれ心配するよりも、次に自分がどう動くか
何を変えて、何を変えずにいけるのか

そんなことを考えてるんだろうな、と想像がつく


今までだって、そうやって一緒にやってきた
その背中に、何度も助けられてきた


他のメンバーの心配が、嬉しくないわけじゃない
それは、とてもありがたいことだから、本当に感謝している

だけど、そんな中で、アイツがこうやって冷静に行動してくれることが、なにより心強かった

小さいはずなのに、いつもより大きく見えるその背中を見つめながら、ふと自分の足元に視線を落とす




鈍い痛みを感じる左半身をそっと撫でる

この二日間だけは・・何としても乗り切りたい

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