パパが治してあげようね *ARS* 9 (ページ33)

今日:17 hit、昨日:23 hit、合計:819,744 hit

二人目のお癒者さん　3　(翔)　☆1000 ページ33

智Side

「翔にぃ、大丈夫かなぁ。倒れてたらどうする?」

智「う～ん…熱が上がってたら大変だよね。
ゆいちゃん元気だから、振り回されてるかも(笑)」

ディナーまで食べてくる予定をキャンセルして
早めに帰宅することにした僕ら。

朝の時点で翔が微熱だったってこと、実は知ってたんだ。

でも翔の気持ちを無駄にはしたくなかったし
僕らが行かなかったらその方が気を使わせてしまうと思って家を出た。

咳も少し出てただけだし、家にいれば大丈夫かなと思ったけど
やっぱりダメだったみたい。

「智にぃ、携帯鳴ってる。翔にぃから?」

智「あ、ほんとだ。うん…翔からだね…」

駅から家までに向かってる最中、携帯が震えて
「やっぱりね…」ってAと顔を見合わせながら苦笑い。

智「うん…うん…。熱は?
…ん、そっか。わかった。
もうすぐ家に着くから、それまで待ってて?」

「翔にぃ、熱上がっちゃったって?」

智「そうみたい。
熱は測ってないみたいなんだけど
動けないって言ってるからたぶんね。
僕走ってくけど、Aはゆっくりでいいから。
ごめんね、先に行ってるね。
荷物持っていってあげる。ちょうだい?」

Aに持ってもらっていた荷物を受け取ろうと手をのばすと
Aはそれを拒否してきた。

しかも隙をついて僕が持っていた荷物まで奪い取り
胸の前に抱えてしまって、
「わたしが持つの」って首を横に振っている。

荷物ない方が速く走れるでしょ? って。
早く帰ってあげなくちゃ、ってさ。

智「そんなにいっぱい持ったら重くない? 平気?」

「大丈夫!! スーパーで買い物した時の方が重いもん。
智にぃ早くしなきゃ。翔にぃが待ってるよ」

智「うん、ありがとね。
Aはゆっくり帰っておいで?」

早くって背中を押すAにお礼を言って
携帯を手に握ったまま走り出す。

ものの数分で到着した家のドアを急いで開け、中に入ると
翔がリビングの真ん中に横になっていた。

智「な、なんでこうなったの…?」

目が隠れるほど下に貼られた冷えピタ。
びちょびちょになった髪。
襟元も濡れている。

これは…汗で濡れているわけじゃないよね…

智「ゆいちゃんが…やってくれたの…かな?」

結「うん!! しょーちゃね、ふきふきって」

あ、これを使ったのか。

絞りきれなくてポタポタと水が滴っているタオルを手にする。

一生懸命、翔の看病をするゆいちゃんの姿を想像して
なんだか微笑ましい気持ちになった。