転落事故 4 (智) ページ25
翔Side
痛みに苦しみ続ける智にぃを救急車に乗せ
雅紀と共に病院に向かう。
おそらく智にぃは腹腔内に出血を起こしてる。
少量の出血でとどまってくれればいいけど、どうだろう。
今は意識ははっきりしてるけど
血圧が下がり気味だから油断はできないな。
翔「智にぃ、ちょっと手、チクッてするからね。
…はい。腕のところも少し押さえるから。
ちょっと痛いけど我慢して」
点滴を落としながら
出血を続ける左腕の裂傷部をガーゼで覆う。
腕、だいぶ腫れてるね…
もしかしたら、折れちゃってるかもな。
智「…さき……まさ、き…は…?」
雅「智にぃ、いるよ。俺、ここ」
顔を苦痛に歪めながらも、呼びかけに反応した智にぃは
目を細めて安心したように雅紀を見つめている。
こんなときでさえ雅紀の心配か。
相当痛いはずなのに…
少しくらい自分の心配したらどうなの、智にぃ。
翔「雅紀なら大丈夫。ちょっと足を痛めただけ。
病院でもう一度全身診てやって
何ともなければ入院なしで様子見るから。
智にぃもお腹と腕ちゃんと治して、早く家に帰らないとね」
俺の言葉にコクコクと頷きながら目をつぶっている智にぃ。
入院が必要なほど重症だということは
自分でもわかっているようだ。
智「っ…ぅぁっ…ハァ…ハァ…」
翔「痛いね…もうすぐ病院着くから。頑張って…」
普段痛みを隠す智にぃが
もれる声を隠すこともせず苦しんでいる。
こんな智にぃは見たことがなくて
どんどんと気持ちが焦っていった。
早く着け…
時間かかりすぎだろ…
もっと急げよ…
イライラしてつい気持ちが声に出てしまいそうになる。
でもここでは俺が冷静でいなきゃ。
俺の隣では雅紀が泣きそうな顔で智にぃの手を握ってる。
荒い呼吸で酸素マスクを曇らせながら
智にぃが痛みに耐え続けてる。
頑張っている2人を
俺のせいでこれ以上不安にさせたくないから。
翔「到着まであと何分ですか?」
15分。返ってきた答えにため息が出る。
まだそんなにあるのか。
翔「もう少しだからね…
着いたらすぐ治療ができるように準備してもらってるから。
もう少しだけがんばっ………さ、智にぃ? 智にぃ!?」
急に反応が悪くなった。
どうしたんだと思いモニターに目を移すと
血圧が低下してきていた。
出血量が増えてるんだ…
ショック状態にだけはならないでくれ…
そう祈りながら、何度も何度も時計の針を確認した。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年10月14日 18時
