パパが治してあげようね *ARS* 9 (ページ12)

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急病人　12　(和) ページ12

翔Side

和名人。

そう呼んだとき、和は笑いながら俺の言葉を否定してきた。

和「やめてよ、翔にぃ。うちには雲の上の人がいるでしょ。
あの人にはまだまだ敵わないから」

そうだった。
和は智にぃみたいな医者になることを目指してるんだもんな。

でも、和だって負けてないと思うよ。

たまたま入ったなんて言ってたけど、一発で入れたのは事実。
それは和の技術があったからだ。

ある程度自信がなきゃ、あんなふうに笑ってられないよ。

和だって実感してると思う。
今までの経験は、確実に自信になってる。

智にぃを越える日だって、そう遠くないんじゃないかな。

和「あ、ひなちゃん起きた?
どう、少しは体調よくなったかな。熱はだいぶ下がったみたいだけど」

しばらくして点滴も残り少なくなったとき
ひなちゃんの目がゆっくりと開いた。

だいぶ顔色がよくなったね。

翔「点滴、効いたみたいだね」

和「ね、よかった。
あとはおうちでしっかり休んで。また何かあったらおいで」

『またきたら…その時も先生がみてくれますか?』

和「もちろん。残念ながらこっちの撫で肩先生はいないけど」

翔「ちょっ、和!! まったく…後でおしおき」

和「うわぁ、怖い怖い。
こんな怖い先生いない方がいいね。
優しい和先生が診てあげるから、安心して来てくれたらいいよ」

小さく笑いながらコクンって頷いているひなちゃんは
病院を怖がってビクビクしていたときとは別人のよう。

これで今日からひなちゃんも、和先生の担当患者になったわけだ。

兄の俺が言うのもなんだけどさ、いい先生に巡り合ったと思うよ。

和先生に任せておけば
これ以上病院嫌いになることはないだろう。

『あ…わたしは先生の肩、すてきだと思います。
優しい感じがする…』

翔「そ、そう? ありがとね」

気ぃ、使ってくれたの、か…?

いや…嬉しいけどさ…なんかすっげぇ複雑。

翔「な、なんだよ」

診察室を出ていくひなちゃんの後姿を見つめる俺の横で
和は口元を手で隠しながらクスクス笑っている。

「翔にぃの肩、素敵ですよ」なんて言いやがってさ。

翔「笑うなよ。こら、和!!」

和「あー、ごめんなさいごめんなさい。
ほら帰ろう、翔にぃ。休みなのに手伝ってくれてありがとう」

…そんな可愛い顔で笑われちゃあ、もう怒る気にならないじゃないか。

まったく君は…お兄ちゃんの扱いが上手いね。

まさかこれも計算なのか?
策士和也、だな(笑)