パパが治してあげようね *ARS* 9 (ページ2)

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急病人　2　(和) ページ2

和也Side

「でね、あの歯磨きのところね、
ああいうさりげないところにキュンってしたりするの。
ねぇ和にぃ聞いてる? わかる?」

よっぽど楽しかったのか
映画館を出てからもニコニコとテンション高くご機嫌のA。

俺の顔を覗き込んできたAに
「そうだね、かっこよかったね」と返すと
「だよね!! だよね!!」って言いながらまた俺の腕を叩いてきた。

「あんなことされたら好きになっちゃう～」って。

今にもスキップしだしそうな勢いだもん。

最近は遊びに行けてなかったみたいだし
いい気分転換になってくれたかな。

これだけ喜んでくれたら、俺も嬉しいよ。
連れてきてやってよかった。

和「お昼ご飯、どこで食べようか。
翔にぃがランチしてきたらって。メールが入ってたよ。
ゆいちゃんはホットケーキ作ってあげたらご機嫌だって」

「翔にぃホットケーキ作れるようになったんだね。
前作った時なんてまっくろくろすけだったもんね」

そうそう。翔にぃ不器用だから。

火加減がわからなくて
ホットケーキを丸焦げにさせたことがある。

なんでも美味しいって食べてくれる智にぃでさえ
食べることを拒んだという、ある意味伝説のホットケーキ(笑)

和「じゃあ俺らもどっかお店行こうか。
パスタでも食べる?」

「食べたい!! トマトのがいいな」

和「はーい、了解。
じゃ行こ。手ぇ繋いでいく? 映画の2人みたいに」

「やだ!! みんな見てるところじゃダメ」

なにそれ。じゃあ見てないところでならいいってこと?

大人になったとは思ってたけど
まだまだ甘えん坊は抜けきってないんだな。

まぁ俺は、ずっとこのままでいいと思ってるけど(笑)

和「うん? A、どうした?」

映画館のロビーでの立ち話を終え出口に向かって歩き出すと
Aがある方向を向いて立ち止まった。

不思議に思って俺も同じ方に目線を向けてみる。

ロビーの端にあるイスに座って
身体を折りたたむようにうつむいている女の子。

隣にいるのは…お友達だろうか。

どうしたんだろう。体調が悪くなったのかな。

「すごくつらそうだよ。和にぃ…」

A、あの子のこと、心配なんだね。
放っておけない性格だからね。

わかってるって。

そんな顔しなくても
俺だってこのままのんきにランチに行くほど非情なやつじゃないよ。