長男の涙 8 (智) ページ8
智Side
他に考えることが多すぎて忘れていた腹痛が、
今になって一気に押し寄せてきた。
お腹を押さえた僕を、
翔が心配そうにみつめてくる。
翔「ごめん、診てやる方が先だったね…
ちょっと服捲るよ?」
やるとなったら早い翔。
すぐに布団がはがされて、
シャツを肋骨が見えるくらいまで上げられた。
翔「えっ…なんだこれ……」
智「……ん?」
僕のお腹を見つめたままの翔の顔が、
どんどん険しくなっていく。
何があったのかと心配になって頭を上げてお腹を見てみると、
ようやく翔が固まっている理由がわかった。
翔「青くなってる……どうしたの、これ。」
智「あぁ……これは……」
みぞおちあたりにできた痣。
確かに痛みはあったけど、
こんなふうになってるとは思わなかった…
翔「思い当たる節はあるの?」
本気で心配して聞いてくれてるんだろうけど、
まさか自分でスマホを打ち付けてできた痣だなんて、
そんなこと言えるわけがない。
智「これはね……
ちょっと、机の角にぶつけちゃって。
そのときにできたのかな…たぶん。」
それらしい言い訳をしてみたけど、
翔は納得していないようで
僕の目を離してくれない。
ここで目をそらしたらよけいに怪しまれると思って
僕も翔の目を見つめ続けていたけど、
翔に両手で顔を挟まれて
ビクッとした僕はつい視線を横に逃がしてしまった。
翔「智にぃ?」
小さく名前を呼ばれて、また視線を翔の目に戻す。
翔「本当のこと、俺には言えない?」
……ずるいよ。
今そんなことを言われて、嘘をつけるわけがない。
これ以上翔を傷つけることになるなら、
自分の情けない行動をさらけ出した方がましだよね…
智「ぶつけたってのは……嘘…ではなくて……」
翔「うん。」
智「……で…」
翔「え? なに?」
やっぱりいざ言おうとすると
こんな恥ずかしいこと知られたくないって思いが強くなって、
つい声が小さくなってしまう。
それでも、
ここまできたら後戻りはできないから…
目は見れなかったけど、思い切って声に出した。
智「……じぶんで…」
翔「ん? 自分で!?
わざとやったってこと!?」
改めて聞かれると、
なぜそんなことをしてしまったんだろうと後悔が強くなる。
自分で自分を傷つけるようなことは、
しちゃいけなかったよなぁ……
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
