みんなの宝物 9 ページ34
翔Side
入るよ、とだけ声をかけて部屋の中に入ると
Aは俺から避けるように
身体を丸めて布団をかぶっていた。
電気もつけずに真っ暗な部屋にいるAは
一日何を考えて過ごしていたのだろう。
ふとゴミ箱に目を移すと
暗い中に白が浮き上がって見えて、
大量のティッシュが捨てられているのがわかった。
ずっと泣いていたんだろうな…
今は規則正しく布団が上下しているから
涙は止まっているんだろうけど。
一日中一人は心細かっただろう。
俺のせいで、よけいに苦しい思いさせちゃったな…
翔「ねぇ、A…」
俺の精一杯の「ごめん」を伝えるために
布団にそっと手を添えて、ゆっくりと声をかけた。
ちゃんと謝りたい。
それから今度はしっかり
Aの心に寄り添ってやりたい。
そう思っていたのに…
「でてって…会いたくない!!」
翔「A……」
落ち着いていた呼吸は速くなり
小さく嗚咽が漏れてくる。
会いたくない……そうだよな。
Aのこと、傷つけちゃったんだもんな…
翔「A、悪かったよ。
俺、酷いこと言ったよな…ごめん」
「うぅっ……いやっ…でてって…こないで…」
翔「A、ちゃんと話しよう。な?」
「いやなのっ…しょうに、にっ…はなしたくない!!」
翔「ごめん、A。俺が悪かったから。
ほら、ゆっくり息しないと、苦しくなるぞ?」
いつまでもそんなことしてても、何も解決しないだろ?
そう言いそうになるのを抑えて
優しく声をかけ続けた。
乱れてくる呼吸を整えてやろうと
布団の間から手を入れて背中に当てた時…
「いやっ!! さわらないで!!
…はなすことっ、ない!!」
手をパシンと払われて
布団から出てきた手に肩を押された。
後ろによろめきそうになるのに耐えて
再びAに声をかけてみるも、
返ってくるのは「でてって!!」の言葉だけ。
ダメだ…堪えろ…って思うのに
「じゃあ出てくよ!!」ってまた声を荒げてしまった。
やってしまったと思ったときにはすでに手遅れ。
俺は部屋を出た廊下で、自分の弱さに頭を抱えた…
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
