パパが治してあげようね *ARS* 7 (ページ29)

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みんなの宝物　4 ページ29

智Side

今朝もまた、Aの怒鳴り声から一日が始まった。

ゆいちゃん、朝は食べる量は少ないんだけど
今日はいつにも増してお皿の上のご飯が減ってない。

大好きな苺ヨーグルトすら食べてなくて
元気もないようだ。

「ご飯減ってないよ?」

結「……らない」

「いらなくないでしょ? お野菜は?」

結「んうぅ…やぁ…」

「やじゃない。残しちゃダメ」

結「んっ…ふぇ…っらないの!! やー!!」

ついにゆいちゃんは
大粒の涙を流しながら泣きだしちゃって、
スプーンを握りしめた手で
ベチベチとテーブルを叩いている。

それでもAの厳しい態度は変わらなくて、
さすがに見ていられないと思った僕は
イスから立ち上がった。

智「A……」

翔「A!! 昨日やりすぎだって言ったろ?」

僕が声をかけるよりも早く
翔の大きな声がリビングに響いた。

その声にびっくりしたのか
ますます激しくなるゆいちゃんの泣き声。

「うえーん!! っらない!!」

卵やらウインナーやら
目の前にあるものを手当たりしだいに掴んで
ぐちゃぐちゃにしはじめたゆいちゃんは、
いらない、嫌いって叫びながら両手を振り回してる。

食べ物が散乱したテーブルは
今のゆいちゃんの心の中を表しているかのようで、
ワンワン泣くゆいちゃんを
どうしても怒る気にはなれなかった。

翔「ごめん、智にぃ。
ちょっとゆいよろしく。熱あるわ。
Aはこっちおいで」

スプーンを振り回している
ゆいちゃんの手をどうにか開かせ、
ケチャップやヨーグルトで
汚れている手を洗わせようと抱き上げる。

翔の言うとおり、確かに身体が熱い。

服も汚れちゃってるし
とりあえずはきれいにしてあげようと
脱衣所に連れて行こうとした時、
翔はAの手を引いて
強引にソファーに座らせていた。

そのままAの目の前にしゃがみこんで
顔をのぞきこんでいる。

Aのことは、翔に任せておけばよさそうだ。

智「雅紀、ゆいちゃんの着替え持ってきてもらっていい?
和はお昼寝用の布団しいといて?」

和「わかった」

智「お願いね。
ゆいちゃん? ご飯食べるの、やめようね?」

僕の胸に顔をうめながら
いまだにヤダヤダって言っているゆいちゃん。

ここのところずっと優しいママに会ってないもんね。

我慢がいっぱいで「嫌だ」が爆発しちゃったかな。

もっと早くにAを止めておくべきだった…

小さな身体には負担が大きすぎたみたい。