みんなの宝物 5 ページ30
智Side
よほど泣き疲れたのか、
服を着替えさせている途中で
うとうとし始めたゆいちゃんは、
廊下でちょっと背中をとんとんしていると
あっという間に眠ってしまった。
今日は幼稚園お休みだよね…
昨日湯冷めしちゃったみたいだし
風邪でも引いたのだろう。
しっかり心も休ませてあげないと
体調も良くならなそうだ。
翔「だから、なんでだって聞いてんの。
ねぇA。
黙ってたらわからないんだけど」
智「あれ…どうしたの?」
和「いや、ちょっとね……
翔にぃお怒りモードになっちゃって……」
リビングに戻って和がしいてくれた
布団に寝かせようと思い扉をあけると、
声を荒げてはいないものの
翔がAのことを責めていた。
最近のAの様子は
明らかにおかしかったからね。
こんなふうにゆいちゃんに
厳しく接するようになったのも、
ここ数日のことだ。
今までゆいちゃんを叱ることはあったものの
何日もこんな態度を取ることはなかった。
絶対になにか理由がある。
翔はそれを聞きだしたいのだろう。
翔「さっきのゆいの顔見たか?
あんなふうに泣くこと今までなかったよ?
追い詰められちゃってたんだよ、ゆいちゃん。
あんなに小さいのに。熱まで出して」
「…………。」
翔「止められなかった俺らも悪いとは思うけど、
止めたところでAは納得したか?
何か思うことがあるから、
あんなふうに厳しくしてたんじゃないの?
それはもう、Aの中で解決したの?」
「…………。」
翔「ん? どう?」
「…………。」
翔「何か言ってくれよ……」
「……い…」
翔「ん?」
「……さい…」
翔「は? うるさいって…
あのなぁ…」
「もぉ!! うるさいよ!!」
今までうつむいていた顔を上げて
赤い目で翔を睨みつけたA。
僕の腕の中でもぞもぞと動いたゆいちゃんを和に渡し
起きないように部屋から出て行ってもらうことにして、
僕も翔の隣に座った。
智「どうしたのA。
言いたいことあったら言っていいんだよ?」
翔「悪いけど
俺はAの考えていることがわからない。
ゆいが何か悪いことしたか?
しつけを越えていじめに見えるよ、俺は」
智「翔!! それは言い過ぎ」
完全にヒートアップしてしまっている2人。
こんなんじゃ
ちゃんとした話し合いなんてできるわけがない。
でもお互いにイライラしている翔とAは止まらなくて、
僕がいくら仲裁に入ろうとしても、無意味だった。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
