みんなの宝物 2 ページ27
智Side
ネクタイの結び目に手をかけながらリビングにいくと、
朝食のいい匂いにまじって
コーヒーの香ばしい香りがふわ〜と漂っていた。
今日は天気もいいし、爽やかな風も吹いてるし、
なんて清々しい朝………
と言いたいところなんだけど、
家の空気はどことなく重苦しい。
「ゆい!! 全部食べなきゃダメって言ったでしょ!!」
ピリピリしているAに
今にも泣いてしまいそうなゆいちゃん。
Aの険しい表情と厳しい口調に
目の前の雅紀と和はぽかーんとしている。
翔と潤もコーヒーを飲みつつ
Aとゆいちゃんの様子をチラチラ窺って心配そうだ。
「ちゃんとトマトも食べて」
結「やっ。きら…もん……」
「嫌いでも食べなきゃダメなの。
ほら、あーん」
朝食で出たプチトマト、
ゆいちゃん苦手なんだよね。
酸味が嫌なのか
中からぷちゅって出てくるのが嫌なのか、
一度口に入れて吐き出してから
それ以来食べてくれないんだ。
「食べないとおっきくなれないよ?」
結「おっきぃ、ならない!!」
「こらっ、ゆい!!」
結「やぁだぁ!!」
トマトを無理やり口に入れられそうになり、
イスから降りて僕のところに逃げてきたゆいちゃん。
トマトを手にしたまま追いかけてくる
Aの顔が本気で、
僕までビクッとしてしまった。
「ゆい、逃げてもダメ。ちゃんと食べなさい!!」
結「や、やぁー!! ふえーん!!」
智「あらあら。朝から大きな声だしちゃって。
よいしょっと。
ゆいちゃん、ママに怒られちゃったね」
僕の脚にしがみついてくるゆいちゃんを抱き上げてやって、
背中をたたいて落ち着かせようと頑張ってみる。
朝から機嫌損ねたら
幼稚園行かないとか言いかねないからさ。
「智にぃ、結心かしてよ」
智「まぁまぁ、そんなに怒らないで。
どうしたの? 今日はずいぶん恐い顔してるね」
そんな僕の言葉にピクッと眉毛を動かして
不満そうな顔をしたA。
今日のところは許してやってよって説得すると、
着替えてくるって言ってリビングを出て行った。
智「ゆいちゃんもお着替えしよっか。ね。」
そんなにボロボロ泣いているわけじゃなかったから、
軽くティッシュで顔を拭いてソファーに座らせてやった。
すぐに翔が隣に座ってきて、
ママ機嫌悪かったねって頭を撫でてやっている。
＿＿＿＿この時の僕らは、
たまにはこういう日もあるか…って、軽く考えていた。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
