みんなの宝物 1 *リク ページ26
ASide
結心の幼稚園の参観日。
周りにはばっちりお化粧をした
奥様がズラーッと並んでいる。
最近は結婚をするのも遅れてるっていうし、
子供を産む年齢も上がってるらしいから
不思議じゃないのかもしれないけど、
ほとんどの人が私より年上みたい。
同年代のお母さんとは
お友達になったけど人数は少ないし、
人見知りの私にとって
先輩ママたちに囲まれる今の状況は
ちょっと居心地が悪い。
でも、全部おにぃに任せるのは嫌だから。
やっぱり結心のことは
私がちゃんとみてやりたい。
周りに馴染むことも大事だし
その方が結心のためにもなると思うから。
私とお母さん方との関係が悪くなれば
その影響が結心にまで及んでしまうかもしれない。
せっかくお友達もたくさんできて
楽しく幼稚園に通ってるのに、
私が邪魔することだけはしたくないもん。
結「ままぁ、みてぇ?」
結心が差し出してきた画用紙。
そこには「ままだいすき」
って書かれた似顔絵があって、
へにょへにょな字も
ちょっと薄い髪の毛も(笑)
頑張って描いてくれたんだなって思ったら
嬉しくてたまらなかった。
周りには折り紙をハサミで切って形作った
お花が貼ってあって、色も鮮やかだ。
ハサミは先生に手伝ってもらわなきゃできないから
上手な曲線で切れてなくてガタガタだけど、それでもいい。
頑張ったってことが、大事なんだもんね。
結「ねぇ、まま。
みんな、すごーいっていぅ?」
「うん。上手だねって言ってくれるよ。
みんなが帰ってきたら、見せてあげようね〜」
結「ね〜♪」
「よし、じゃあ帰ろう? お洋服着て?」
お絵かきした後
みんなでお昼ごはんを食べて、
そろそろ帰る時間。
帽子をかぶらせ
まだボタンが上手く留められないゆいに代わって、
わたしが通園服着せてあげた。
『あの、嵐谷さんちの子なんだけど……』
ちょうどそのとき
部屋の中から聞こえてきたお母さん方の話し声。
その内容に、わたしはぎゅっと唇を噛みしめた。
きっと廊下でしゃがんでいるわたしの姿なんて
見えていないんだろう。
もしかしたらいつもこうやって
裏でわたしたちのことを話していたのかもしれない…
結「まま…どーしたの?」
黙ってうつむくわたしに
結心が心配そうに声を出す。
「なんでもないよ。帰ろ?」
早くこの場所を離れたい…
わたしは結心の小さな手を引いて
足早に園内を出た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 541人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
