パパが治してあげようね *ARS* 7 (ページ19)

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松岡先生のお説教　7　(翔) ページ19

翔Side

眠りから覚め、目を開けて見えたのは
朝日に照らされたソファーに身を沈める松岡先生の姿。

頭がさえてくると同時に
昨日の出来事が一気に思い出され、
ものすごい迷惑をかけてしまった…
という罪の意識にサーッと血の気が引いていく。

俺が動けずにベッドの上で固まっていると、
ん゛ー、と声が聞こえて
松岡先生がソファーの上で伸びをしているのが見えた。

腕時計で時刻を確認してだるそうに身体を起こすと、
テーブルの上に置かれていた白衣を羽織りだす。

そこでようやく俺の視線に気づいたようで、
起きてたのかと言いながら
ベッドサイドのイスに腰を下ろした。

松「体調はどうだ?
呼吸しづらかったりしないか?」

翔「はい…大丈夫です…」

松「そうか。よかったな」

そう言いつつ、
点滴の残量を確認している松岡先生。

いったいどこから謝ればいいのかわからず、
口からはすみませんでした…
の一言しか出なかった。

松「……それは、誰に対してだ?
俺か? それとも中川さんにか?」

翔「…えっ?」

松「俺は目の前の患者を助けただけだからな。
それが俺の仕事。
謝られるようなことはされてない。

でも、中川さんはどうだ?
体調もすぐれない医者にふっとい針刺されて、
そんなの一歩間違えば大事故だ。

お前、スタッフの誰にも
体調が悪いことを言わなかったよな。

それでもしものことがあったら
どうするつもりだった?
そこまでして検査を強行した理由は?」

翔「それは……」

松「どうしてもお前がやらなくちゃいけなかったのか?
日にちをずらすことはできなかった?」

翔「………」

松「なぁ、お前は何が大事なんだ?

中川さんの命か?
それとも、削られていく命を
つなぎとめてやったという誇りか?

なんだよ、結局はお前の自己満足じゃないか」

……松岡先生の言葉に、何も返すことができない。

せっかく築き上げた信頼関係を、
壊すようなことはしたくなかった。

「あんたに任せる」の言葉を裏切って、
またふりだしに戻ってしまうのが怖かった。

日にちをずらして気が変わってしまったら?

もしそれで、
また治療を受ける意志が揺らいでしまったら?

……すべて中川さんのためだと思い続けていた。

だけど結局は、
自分のためでもあったのかもしれない。

自己満足……その言葉を否定することは、できない…