長男の涙 2 (智) ページ2
智Side
智「翔、調子はどう?」
翔「ん……腹、いてぇ……」
智「まだ痛いかぁ…
ちょっと触ってもいい?」
翔「やだ…いいよ、昨日も触った…」
智「昨日は昨日(笑)
今日はまた別だよ。
ほら、服捲って? 痛くないようにするから。」
触んなくても痛いんだって、と
拗ねながらもお腹を出してくれた翔は、
僕の手の動きを、じっと見つめている。
翔が体調を崩して寝込んだのが昨日の夜。
発熱してて腹痛もあるみたいだけど、
おそらく原因は過労だろう。
ちゃんと休んでほしいけど、
そんなの外科のドクターに言ったところで
無理なことはわかってる。
僕にできることは少ないけど、
でもせめて、看病くらいは…
できるだけ早く、復活させてあげたいからね。
智「お腹の力抜いて?
痛くないからさ。」
翔「だから…触らなくても痛い…って」
智「よけいに痛くはしないよってこと。
強く押さないから。
ほら、普通に呼吸して?
……そうそう。
痛いのは胃のあたりだよね?」
翔「ん……でも、ちょっとだけだし…
……だい、じょぶ」
智「ん〜……胃潰瘍とか、
そういうのではないだろうけどね。
もう少し休んで、様子を見ていこうか。
はい、お腹しまっていいよ。」
小さく頷いた翔の汗ばんだ額を拭くために
前髪をかき上げてやると、
息を吐きながら目をつぶった翔が、ぼそっとつぶやいた。
翔「智にぃの手ってさ……不思議だよね…」
智「んん? それ褒めてるの?(笑)」
僕の問いにコクンと頷き、
目をつぶったまま微笑んだ翔。
でも、穏やかな表情は一瞬……
次に目を開けたとき、
翔の目は哀しそうに揺れていた。
智「……どうした?」
翔「いや……迷惑かけてんな…って。
智にぃに……」
智「何言ってんの。」
翔「智にぃだってさ、疲れてるでしょ?
俺のために時間使わせちゃってさ……ごめん…」
智「急に不安になっちゃったの? 翔くんは。
こういう時くらい、甘えちゃえばいいんだよ。」
翔「でも……さ……」
智「僕が寝込んだ時だって、
みんなでお世話してくれたじゃない。
家族なんだから、助け合っていけばいいんだよ。
謝ることなんかじゃない。ね?」
一回気にしだすと、
翔は引きずっちゃうことも多いから。
弱っているときは特にだ。
今回もしばらく納得のいかなそうな顔をしていたけど、
睡魔に勝てなかったのか“智にぃの時は俺が…”
って言いながら寝てしまった翔に、
僕は思わず笑みがこぼれた。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年6月29日 14時
