パパが治してあげようね *ARS* 5 (ページ45)

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食べたくない　10　(雅) ページ45

翔Side

智「なんとか、終わったね。」

翔「うん。よかったよ・・・
これで少しは回復してくれるといいんだけど。」

智「ちょっとずつ元に戻っていってくれればね。
焦りは禁物だよ。」

翔「そうだね。
口内炎が治ったら少しず・・・」

智「あっ!!」

翔「あっ?」

智「今やっちゃおう。
うん、そうしよう。ね、雅紀。
ちょっと待っててね～」

いきなり立ち上がった智にぃは走って病室を出ていって、
何がなんだかわからない俺は、ポツンと取り残された。

翔「何がやりたいんだろうね～、智にぃは。」

なんて、眠っている雅紀に
小さく話しかけながら前髪をかき上げてやっていると・・・

翔「なに・・・それ?」

手に何かを持った智にぃが帰ってきた。

智「お薬で～す。
寝てる間にやってあげようかなって。
また泣かせるのは可哀想だから。」

口内炎の塗り薬。

昨日塗ってやった時、
めちゃくちゃ嫌がられちゃったからね。

痛いから、触られたくないんだろう。

今はぐっすり眠ってるから、
優しくやってあげれば起きないんじゃないかな。

智「はい、まーくん? あーん。」

翔「そんなの、雅紀が起きてたら怒られるぞ～(笑)」

智「ふふっ。いいの。
こうするとさ、なんか優しくなれるでしょ?
ほら、お薬ぬりぬり。」

手袋つけて、そーっと開けた口の中に
薬を塗ってやってる智にぃの顔は、確かに優しい。

顔に触れる手も、口の中に入れられている指も、
動きすべてが優しい。

でもさ、智にぃはまーくんのときも、雅紀のときも、
優しさは変わらないと思うよ。

言葉の選び方とか、話し方とか、
そういうのは変わってくるかもしれないけど。

誰にでも同じ優しさを、
変わらず伝え続けてくれる智にぃを俺は尊敬してるし、
こういうところ、本当に敵わないと思う。

智「早く良くなるといいね～
こんなのも早く抜いてさ。元気になろう。」

鼻から伸びている管と、
腕に伸びている管に触れながらつぶやいた智にぃに、
俺は何度も頷いた。

翔「早く家に連れて帰ってやらないと。」

智「そうだね。きっとすぐに元気になるから。
大丈夫だよね～」

智にぃが言うと、
本当に大丈夫なんだって思える。

ふにゃって笑いながら、
さりげなく言った言葉でもこの安心感。

ほら、また俺は、智にぃに敵わない。