食べたくない 11 (雅) ページ46
翔Side
翔「いいね〜。かわいい、かわいい(笑)」
雅「やめてよぉ〜。恥ずかしいよ。」
雅紀の頬に貼られた
うさちゃんの絵が描いてあるシール。
胃管を止めておくためのシールに
智にぃが毎回絵を描いてるんだ。
ちなみに初日は有名なパンのキャラクター。
この日はまだ雅紀は
自分の顔に貼られてるシールを気にする余裕がなかったから、
雅紀が気付く前にはがされた。
その次は猫型ロボット。
細いペンでさ、器用に書くんだよ、智にぃ(笑)
しかもかなりのクオリティーで。
このころになると雅紀もだいぶ回復してきて
病室の鏡で自分の顔を見て固まってた。
なんでドラちゃんがいるの?って(笑)
で、今日も智にぃにお絵かきされて
顔を赤くしてるってわけ。
俺がかわいいじゃんって頬を撫でると、
照れながらも笑顔を見せてくれるんだけどね。
ちょっと前までは話す元気すらなかったんだから、
こうして笑えるようになったのは嬉しいこと。
治療もたいぶ順調で、
熱も下がって、口内炎も完治した。
血液検査の数値もほぼ正常になったしね。
体力も回復しつつあるし、
あとは胃に入った管さえ抜ければ退院だ。
智「ちょっとご飯つないじゃうね。」
雅「うん。
よく見るとさ、気持ち悪いよね。
見た目が・・おいしそうには見えない(笑)」
智「そうだね(笑)
よしっ、準備完了。はい、流すよ〜」
雅「うん。いただきまーす。
ふふっ。なんかへんなの〜」
チューブに流動食をつなぐ。
これだけで、雅紀の食事は終了だ。
あまり見た目の良くない流動食を不味そうだと茶化したり、
勝手に食物が流れ込んでくるだけなのに、
いただきますと言うことを不思議がってみたり、
笑顔を見せている雅紀は、
今の状況を不快には思っていないようにみえる。
でもこれは、雅紀の精一杯の気遣い。
こんなふうにしか雅紀を守ってやれなかった俺たちへの、
あいつなりの優しさだ。
最初は食事のたびに
雅紀のことを可哀想な目で見てしまっていた。
でも、雅紀の優しさに気付いたから、
俺らもこんな顔をするのはやめようって決めたんだ。
俺らが元気にしてやるとか言っときながら、
元気にしてもらっていたのは俺らの方だったんだよな。
ここまで回復したのも、雅紀が強かったから。
だからここまで頑張れた雅紀なら、
最後の壁も乗り越えられると思う。
智にぃも言ってたしね。大丈夫って。
からあげが食える日も、近いんじゃないかな(笑)
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
