0歳のママ 11 ページ34
ASide
出産が、大変だということはわかっていた。
でも、こんなに長くて痛くて辛いとは・・・
激しい痛みに耐えるのに精一杯で、
みんなの呼びかけに答える余裕がない。
「水分取っとこうね」
「ちょっと体勢変えるよ?」
「もっと強く擦ろうか?」
そんな優しい声に頷くこともできないのに、
おにぃたちはずっとそばで励ましてくれて、
なんとか気を紛らわすことができた。
それは分娩室に移ってからも変わらなくて、
温かい手が絶えずパワーを送ってくれる。
「はぁ、はぁ・・にぃ・・」
智「うん、いるよ?
他のみんなもね、外で応援してるから。」
翔「ほら、聞こえる?
頑張れ〜って。」
耳に当ててくれた電話から、声が聞こえる。
今日までずっと
私を助けてくれた大事な人たちの声。
私のためだけじゃなくて
みんなのためにも、頑張らないと・・・
“はい、いきんで!!”
「んんん゛ーー!! あぁっ!!・・・はぁ、はぁ・・」
智「いいよ〜、上手上手。
もうね、頭見えてるってよ?」
翔「A、もうすぐ会えるよ。
もうちょっと・・もうちょっとな。」
痛みのせいで上手く息ができなくて、
思いっきりいきむたびに、すごく苦しくなる。
もうすぐって言われてから、もうかなり経った。
なかなか赤ちゃんは出てきてくれなくて、
何度もいきむたびに体力が奪われていく。
翔「A、これで最後だって。
はい、吸って〜、吐いて〜、吸って〜・・・よしっ、いきめ!!」
もう身体も限界だったけど、
最後の力を振り絞って、思いっきりいきんだ。
翔「頑張れーーー!!」
「んんーー!! んあぁっ!!」
.
.
“おぎゃぁぁ〜”
大きな声で叫んだのと同時に聞こえてきた、力強い泣き声。
産まれた・・・
やっと、やっと・・・
おめでとうございます、の言葉とともに胸の上に乗せられた命が、
小さくて、でも、すごく重くて・・
この子に負けないくらい大きな母親になろうって決意したのと同時に、
止まらない涙が何度も頬を伝った。
翔「よく・・頑張った。
おめでとう、A。」
智「いらっしゃい、結心ちゃん。
今日から君は、僕らの家族だよ。」
みんなで決めたこの子の名前を愛おしそうに呼ぶ智にぃ。
口を押えながら私の手を震えた手で握ってくれた翔にぃ。
目を潤ませている2人は、
私が微笑むとさらに目に涙をためながら、
きれいな泣き顔で笑ってくれた。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
