膀胱炎 6 (翔) ページ17
智Side
病院に迎えに行ったとき、
翔は小児科の診察室のベッドに横なっていた。
どうやら過労に高熱が重なって、
倒れてしまったらしい。
最近忙しそうだったもんなぁ〜
あんまり家にも帰ってきてなかったし。
あとから診察室に入ってきた松岡先生も、
無理しすぎだって苦笑いしてた。
ゆっくり休ませてやれ、っていう松岡先生に頭を下げ、
翔をやっとのことで家に連れて帰ってきて、寝室まで運んだ。
半日以上寝続けてようやく目を覚ましてからも、
翔はボーっとした様子で目の焦点が定まらない。
かと思えばいきなり大きな声を出して
起き上がろうとするもんだから、僕は必死で押さえこんだ。
智「ちょっと、翔!! 急に起きたらダメだって。」
翔「こ・・くん・・・こー・・くんが・・・」
智「こぉ・・くん?
あぁ、その子ならね、心配いらないよ。ほら。」
ポケットから一枚の紙を取り出して、翔に渡した。
それを驚いた顔でみつめていた翔。
しばらくしてから小さく微笑んだ。
智「こうすけ君っていうんだね。
わざわざ持ってきてくれたんだよ。
翔先生にプレゼント、って。」
しょうせんせいへ。
しょうせんせい、だいじょうぶ?
おねつさがったら、またいっしょにおさんぽしてね。
しょうせんせいが、はやくよくなりますよーに。
こうすけより。
可愛い字で、一生懸命書いたのが伝わってくる。
下の方には翔の似顔絵も書いてあって、
その顔はニコニコと笑っていた。
智「うれしいね、翔。」
翔「うん。」
智「早く元気な顔見せてあげなきゃね。」
翔「うん。」
手紙から目を離さずに頷いていた翔の目は、
少しうるんでいた。
小児科のナースさんから、詳しい話を聞いたんだ。
翔はあの子の目の前で倒れちゃったんだってね。
2人とも仲がよくて、
あの時も一緒に散歩に行った帰りだったって。
体調が悪いことは自分でも自覚してたんだろうけど、
ちょっと無理しちゃったんだろうなぁ。
目の前で人が倒れるなんて、
ましてや大好きな先生が青い顔して意識を失うなんて、
小さな子供にとってはかなりショックだっただろう。
きっと翔も、そのことを気にしてると思う。
だからこの手紙は、
翔にとって何よりも嬉しいものなはずだ。
今すぐにでも、
感謝の気持ち、伝えたいんじゃないかな。
ありがとうを言うためにも、
早く元気にならないとだね、翔。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
