パパが治してあげようね *ARS* 4 (ページ9)

今日:10 hit、昨日:31 hit、合計:811,340 hit

麻酔のない手術　8　(和) ページ9

翔Side

翔「和、消毒始めるよ?
それが終わったら、麻酔をするからね。
ちょっと痛いけど、動かないで頑張れるか?」

俺の問いに、和は目を潤ませながらも頷いてくれた。

できるだけ怖い思いをするのは短時間にしてあげたい。

そう思って、まだ固定の指示を出すのはやめておいた。

俺が消毒薬のキャップを外しているのを、
不安そうに見つめている和。

俺は和に目線を合わせて微笑んでから
“ちょっとしみるよ”と声をかけて、傷口を消毒していった。

小さく呻き声を上げた和は、
動きそうになる身体を制御しようと、歯を食いしばって必死に耐えている。

麻酔をするために針を刺しても、
“痛い”ということは一言も言わなかった。

やりすぎなくらい頑張っている姿が、逆に辛い。

智にぃも雅紀も潤も、
唇を噛みしめながら、辛い光景を見つめていた。

翔「かず、注射おしまい。
よく頑張った。えらいぞ。」

これからが、一番辛いところ。

その前に少しでも恐怖を与えないように、
俺は和の頭を撫でながらゆっくりと話しかけた。

翔「今度はね、ちょっと身体を押さえるよ?

みんなが頑張ってくれるから、
和はいくらでも暴れていい。

痛くて我慢できなかったら、
思いっきり声を出していいからね。

さっきみたいに頑張れるのもえらいけど、
今度は我慢しない方がえらいな。

いーい? わかった?」

和「うっ・・・うぅっ・・・っく・・・」

うなづきながらも涙を流している和に、胸が締め付けられる。

翔「怖いねぇ。」

和「ん・・・うぅ・・」

これから襲ってくるであろう痛みに耐えようとしている和は、
いったいどれほどの恐怖を抱えているのだろうか・・・

考えれば考えるほど弱気になってしまいそうで、俺は慌てて気持ちを切り替えた。

翔「頑張ろうね、和。」

和「んっ・・・がん・・・ばる。」

翔「うん。いい子だ。」

俺は和の頭を抱きしめるようにしながらポンポンと優しく撫でると、
スッと体を離して、すぐに目線を患部に移した。

今から、俺はここだけに集中する。

どんなに和が泣き喚こうが、やらなきゃいけないんだ・・・絶対に。