パパが治してあげようね *ARS* 13 (ページ50)

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拗ねる　8　(雅) ページ50

智Side

松「その前に…兄ちゃんにも見てもらうか。口開けてみ？あーんして。あーん」

一度腕を離して白衣のポケットからペンライトを取り出した松岡先生は、雅紀の顎を指で掴んでクイッと上を向かせた。
普段は渋って一度じゃ口を開けてくれないことが多い雅紀も、今日はさすがに逆らえないみたい。

松「ほら、塊肉食う時みたいにさ、大きく開けなさいって」

雅「んん…いひゃい…」

松「でかく開けると痛いか？まぁこれだけ腫れてりゃ仕方ないな」

松岡先生は真面目に言ってるんだろうけど、塊肉を食べる時って、例えがワイルド過ぎて笑ってしまう。

強引そうに見えても威圧感はないから、雅紀も無駄な力が入らずに過度な緊張もしていないみたいだ。

松「ってことだから。俺の判断は正しいですかね、智先生」

智「ふふっ、はい。僕も同じ考えです」

赤く腫れた喉をライトで照らしてじっくり見せてから、先生の診断と治療方針を教えてくれた。
急性の扁桃腺炎。僕も翔も、松岡先生に同感だった。

でも念のため、採血くらいはしておかないとね。

雅「いたいっ、いたい！」

松「おーおー元気だなぁ。38度も熱がある人とは思えない」

見ているぶんには一発でスーッと針が入ってるし、騒ぐほどの痛みはないはず。
大袈裟な雅紀に付き合ってくれている先生には感謝だね。

テキパキと血液を引きながらも、笑っている顔には優しさがにじみ出ている。

翔「検査結果出るまで時間あるよね。俺ちょっと電気屋行ってくるわ。
バッテリー買ってくる」

雅「しょーにぃ、俺黒がいい」

翔「雅紀は黙って治療を受けてなさい。色は俺のセンスで選ぶからな」

そう言って笑った翔は、雅紀のおでこを指でピンと弾いてから診察室を出て行った。

雅紀の携帯がつながらなかった訳、昨日充電し忘れて電源が切れていたのが原因なんだって。
このおっちょこちょいには予備のバッテリー持ち歩かせなきゃダメだって、翔がね。

松「連絡取れないと、不便だからな」

智「そうですね、何かあってからじゃ遅いですから」

電話ができていたら、こんなに騒ぐことはなかったかもしれない。
今回の失敗は、ちゃんと次に活かしていかなくちゃね。