拗ねる 7 (雅) ページ49
智Side
松「はははっ、そんなの隠すことでもなんでもないだろ〜。何やってんだか」
雅「だ、だって！」
雅紀が僕らに黙って、無理をしてまで外出した理由。
それを聞いた松岡先生は、手を叩きながら豪快に笑った。
松「大事な日だったんだな。だったらそれを素直に言ったらよかったじゃないか。
こんな理由なら、行くのを止めはしなかっただろ？」
先生の言うとおり。これを先に聞いていれば、僕は雅紀を止めることは出来なかった。
そんなことをしたら、雅紀が一生後悔するかもしれないから。
大袈裟とかじゃなくて、本当にね。
松「いつ帰ってくるのかわからないのか？」
雅「はい…」
松「そうか…アメリカかぁ…。遠いなぁ」
友達がアメリカで事業を立ち上げるために日本を出るんだって。
もしかしたら、一生向こうで過ごすことになるかもしれない。
そして今日が、渡米前の最後の集まりだったって。
松「で、顔を見るだけでもと思って家を出たわけね」
雅「はい…」
松「最初から遊ばずに話だけして帰るつもりだったと」
雅「はい…」
松「帰る途中に怪我人を見つけて、ここまで連れてきてくれたわけな？」
雅「うん…」
松「おぉ、偉いじゃないか」
偉いと言われてちょっとだけ表情を明るくした雅紀。
でも次の言葉でまたシュンとしてしまった。
松「でも事情を話さなかったのは減点。いいか？」
雅「…はい。ごめんなさい…」
松「まったく、今はこんなに素直なのになぁ。
一回拗ねちゃったから、意地張って本当のこと言い出せなかったとか、そんなことなんだろ？
ほんとバカ。愛すべきバカだよ、お前は」
またまた豪快に笑った松岡先生は、なんだか楽しそう。
その姿に、僕も翔もつられて笑ってしまった。
昔から不器用なところ、我が家はみんな同じなんだ。
雅「ごめん…智にぃ、翔にぃ…。勝手なことして…ごめんなさい」
智「いいよ、よく話を聞かなかった僕らも悪いから」
翔「ま、心配はしたけどな」
うん、すごく心配はしたけど、でも無事だったから。
雅紀もやるべきこと、ちゃんと出来たみたいだしね。
松「よーし、仲直りもしたところで、ベッドに横になろうか。
雅紀、腕」
雅「腕…？え…えっ…」
「心配かけたんだから、これくらい仕方ないよな」って、腕を押さえて血管を探り始めた松岡先生に、雅紀はオドオドしてる。
この先生、やるとなったら本当に早い。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2014年10月4日 20時
