パパが治してあげようね *ARS* 13 (ページ19)

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アナフィラキシー　5　(翔) ページ19

ASide

小さな頃からおにぃみたいな比較的穏やかな人たちと過ごしてきたからか、派手で元気の良すぎる男性がどうも苦手だった。

でもその人たちと関わる可能性がない状況なら全然大丈夫。

街に出れば普通にすれ違ったりするし、ファミレスに行けば隣の席で若者グループが騒いでいることだってある。
今日もそれと同じ。見知らぬ人たちなんだから。

そう思って気にしないようにしてたのに、まさかこんなことになるなんて。

「…めて…くださ…」

こんなこと初めてで、逃げることもできずに自分でも聞こえないくらいの声を出すことしかできない。

どうしよう…そう思って泣きそうになった時。
ポンと背中に手が当てられて、緊張していた身体から力が抜けた。

そうだ、私は今一人でここにいるわけじゃない。
あまりのことに、そんなことすら忘れていた。

智「離してあげて？」

智にぃが助けに来てくれた瞬間、少しの間を開けて手を叩きながら笑い出した二人組は、頬を赤くしながら少し舌っ足らずな喋り方で煽ってくる。

『誰？正義のヒーロー様の登場？』

智「ん…なんでもいいけどさ。ちょっと飲み過ぎだよ…
ふらついてるけど大丈夫？」

普通こんなことを言われればイラッとして声を荒らげてしまいそうなものだけど…
こんな時まで智にぃは相手の身体の心配。

なのに、目の前の男性はそんなのお構いなしで、大きく一歩私達の方に踏み出し近づいてきた。

『だから誰なんだって。この娘はね、今俺達と遊ぶ約束をしたの。邪魔されちゃ困るよ』

約束？
一方的に話を進めていただけのくせに…

この人達とは、これ以上話してもダメだよ。
これだけ酔っぱらっていたら、まともな話し合いなんてできっこない。

走って逃げよう。そうすれば…

智「…それは違う」

「え？」

智にぃの手を掴んで走りだそうとした時、聞いたことのないような低い声がしてゾクリとした。

智「邪魔？Aは俺の女だよ。ふざけたことを言うんじゃない」

『な、なに。彼氏？』

智「僕ら、これからランチなんだ。お腹ペコペコでさ。
君たちも、お友達が待ってるんでしょう？」

『あ、あぁ…まぁ…』

智「ん。じゃあそういうことだから。もういいよね？
お互い、休日を楽しもう。A、行くよ？」

静かに、でも重くのしかかるような…
それは一瞬でまたすぐに元のにこやかな表情に戻ったけれど。

威勢のなくなった男性2人は、背を向けて遠ざかっていく私達を、追いかけてくることはなかった。